量子コンピューターとはなにか簡単に!仕組みや実用化は?

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量子コンピューターとはなにか

GoogleやマイクロソフトそれにIBMという世界の名だたるIT企業が熾烈な開発競争を繰り広げている分野があります。

量子コンピューターです。

スーパーコンピューターを遥かに凌ぐ性能が期待され、人工知能や新薬開発への応用など、莫大な需要が見込まれています。

量子コンピューターは電子や光の粒などの量子と呼ばれる極めて小さな物質の世界での物理現象を利用し、一部ですでに実用化され、グーグルやNASAなどが購入、人工知能などへの応用が始まっています。

また、アメリカが国家プロジェクトを立ち上げて、さらに高性能な量子コンピューターの研究を進めていることや、Googleが自社でも量子コンピューターの開発を進めています。

量子コンピューターの概念を世に送り出したのは東京工業大学の西森教授らのグループです。
教授のグループは、およそ20年前この量子コンピューターの原理を初めて提唱しました。

西森教授によると

当時は応用を全く考えていない話だったが、ときを20年経てここまで広がるのは喜びであるし驚きでもある。
この分野が急速に立ち上がりつつある、一般市民に非常に大きな未来が広がっているのではないかと、私自身は思っているのです。

 

超高速な処理能力の仕組みは?

従来のコンピューターでは、情報は0か1のどちらかで表され、これを、1ビットと呼びます。
一方量子コンピューターは0でも1でもある重ね合わせという現象を作ることができます。

例えば、3ビット分の情報を処理する場合、従来のコンピューターでは、001・010など8回の処理が必要になります。

ところが、0でも1でもある状態を表せる量子コンピューターなら計算は1回で速度は8倍です。

30ビット分になると組み合わせは一気に増えて10億通り。
ところが量子コンピューターなら1回で、問題によっては従来の1億倍の処理速度で処理できることが、Googleの研究でわかっています。

また、理論上はスーパーコンピューターが1000年かかる計算も瞬時に解き消費エネルギーも1キロワット以下と省エネ効果があるということです。

期待される実用化は?

広い分野への応用するための研究がすでに始まっており、量子コンピューターを使って、大都市の渋滞という社会問題を解消するという研究でもすでに成果が出ています。

渋滞に悩む北京、シミュレーションで400台のタクシーを一斉に空港まで行かせるとたちまち大渋滞が発生。
これを量子コンピューターで処理するとわずか数秒で最適なルートが示され、渋滞が消えました。

ドイツの自動車メーカーは、将来の自動運転システムなどに応用しようとしています。

量子コンピューターは、膨大な数の組み合わせの中から最も適したグループ分けを瞬時に計算することが可能で、将来的には交通渋滞の緩和や新薬の開発、そして近年目覚ましい技術開発が進む人工知能などにも役立つと期待されています。

初の国産機 開発に成功

2017年11月20日、量子コンピューターの初の国産機の開発に、国立情報学研究所やNTT・東京大学など国のプロジェクトチームが成功したと発表しました。

今回の国産機では、全長1kmのループ状の光ファイバーに量子である光の粒を大量に入れ、そして、超高速で回転させることで複雑な組み合わせを解く問題に挑みました。

その問題を今回の国産機はわずか0.005秒以下、スーパーコンピューターの100倍の速度で解くことに成功しました。

今回の国産機はこれまでの量子コンピューターよりも優れた点もあります。

6年前にカナダのベンチャー企業が世界で初めて発売した量子コンピューターは、超伝導状態にした金属の中で電子を使うため、絶対零度近くまで冷やす必要がありましたが、今回の国産機は光を使うため室温でも動作するということです。

研究グループによると、今回の国産機の能力を使えば、2020年の東京オリンピックパラリンピックのメインスタジアムで観客数万人が同時にスマートフォンなどの無線LANを使った場合、近隣の基地局にどう繋げば混乱を起こさないかという問題の解決に活用が期待されるということです。

プロジェクトチームは開発した量子コンピューターを11月27日から世界の研究者に向けてインターネット上で公開し、ソフトウェアの開発や性能の向上を目指すとしています。

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