初めて歩く道なのに、「ここを前にも通った気がする」。初対面の場面なのに、「この会話を知っている」と感じる。そんな不思議な体験が、デジャブです。
デジャブはなぜ起こるのでしょうか。記憶の研究では、「知っている感じ」と「具体的に思い出すこと」が一致しない仕組みが、一つの手がかりになっています。ただし、すべてのデジャブの原因が、一つに確定したわけではありません。
この記事では、既視感の意味、景色の配置を使った実験、予知したように感じる理由を紹介します。「分かっていること」と「まだ分からないこと」を分けながら、身近な謎を見ていきましょう。
- デジャブは、初めてのはずなのに経験済みと感じる「既視感」。
- 過去の景色との配置の似かよりが、既視感を生む場合がある。
- 「次が分かる気がする」ことと、本当に予測できることは違う。
デジャブとは?「既視感」が生まれる不思議な瞬間
デジャブ(déjà vu)は、日本語では「既視感」と呼ばれます。初めての状況だと分かっているのに、以前に経験したような親しみを感じる体験です。
単に「見覚えがある」だけなら、実際に前に見たものを思い出しているのかもしれません。デジャブの特徴は、「初めてのはず」と「知っている感じ」が同時にあることです。この食い違いが、独特の不思議さにつながります。
その二つの感覚を組み合わせ、実験室でデジャブに似た体験を調べた研究もあります。セント・アンドルーズ大学の研究者による2014年の論文(PDF)は、新しさへの気づきと親近感の関係を扱っています。
デジャブはなぜ起こる?「知っている感じ」と記憶のずれ
ある人を見て「知っている人だ」と感じても、どこで会ったか思い出せないことはありませんか。これはデジャブそのものとは限りませんが、記憶の働きを考えるよい入り口です。
記憶を振り返るときには、具体的な出来事を思い出す場合と、詳しい内容は出てこないのに親しみだけを感じる場合があります。
| 感覚 | 身近な例 | 分かること |
|---|---|---|
| 具体的な想起 | 昨日、この店で友人と食事をした | いつ・どこで・何をしたか |
| 親近感 | この店内を知っている気がする | 経験済みのような感じ |
コロラド州立大学のAnne Cleary氏の研究室は、具体的な記憶を取り出せなくても、何らかの「知っている感じ」が残る現象を調べています。大学の認知心理学研究の紹介では、記憶を思い出せないときの親近感や、デジャブが研究対象として挙げられています。
デジャブを考えるうえでも、親近感が何を手がかりに生まれたのか、その出どころを思い出せるのかが重要になります。
初めての場所でもデジャブが起こる理由|似ているのは「配置」かもしれない
たとえば、旅行先のカフェに初めて入ったのに、以前来た気がしたとします。店の名前や家具は違っても、入口、カウンター、窓の並び方が、昔行った別の場所に似ているのかもしれません。
これは説明のための例ですが、景色の要素の配置が似ていることで、デジャブが起きやすくなるかを調べた実験があります。
2012年の研究では、参加者がVRの景色を体験したあと、以前とは別の景色を見ました。新しい景色が、先に見た景色と配置の点で似ている場合、元の景色を思い出せなくても、親近感やデジャブの報告が増えました。研究概要は大学の論文紹介で確認できます。
つまり、細部は初めてでも、全体の並び方が記憶と重なることがあるのです。「同じ場所を経験した」とは限らなくても、似た特徴を手がかりに記憶が働く可能性があります。
コロラド州立大学の研究紹介でも、見た目の異なる部屋に似た配置を持たせ、VRで既視感を調べる方法が説明されています。ただし、この結果だけで、日常のすべてのデジャブを説明できるわけではありません。
デジャブで未来が分かる?予知の感覚を調べた実験
デジャブの最中には、「次に何が起きるかも分かる気がする」と感じることがあります。ここでは、そう感じることと、実際の正答率を分ける必要があります。
Cleary氏らの2018年の研究では、以前の経路と似た場面を使い、次にどちらへ曲がるかを予測してもらいました。デジャブを感じたときには「次の方向が分かる」という感覚が強まりましたが、予測の成績は偶然の水準を上回りませんでした。
論文「Déjà Vu: An Illusion of Prediction」は、デジャブに伴う予感が、実際の予測能力を反映しているとは限らないことを示しています。
「絶対に知っている」と強く感じても、それだけで過去の経験や未来の出来事が確認できたことにはなりません。実験では、本人の確信と実際の成績を別々に調べています。
デジャブの反対は「ジャメヴュ」|知っているのに初めてのように感じる
デジャブとは逆方向の不思議な体験として、「ジャメヴュ(未視感)」があります。よく知っているものなのに、急に見慣れない、奇妙なものに感じる体験です。
セント・アンドルーズ大学などの研究では、同じ単語を何度も書く課題を使い、見慣れた単語が変に感じられる体験を調べています。大学の研究紹介によると、この研究は2023年のイグノーベル文学賞を受賞しました。
「知っている」という判断と、実際に感じるなじみ深さは、いつも同じ動きをするわけではないのです。
デジャブについてよくある疑問
デジャブの原因は、もう完全に分かっている?
完全には分かっていません。景色の類似や、親近感と新しさの食い違いは有力な研究の手がかりですが、一つの実験がすべての体験を再現するわけではありません。
VRの実験は、日常のデジャブと全く同じ?
全く同じと決めることはできません。実験では条件をそろえて、特定の要素が体験にどう関係するかを調べます。2014年の研究も、実験室でつくった類似体験には限界があることを説明しています。
まとめ|デジャブは、記憶の働きを考える入り口
デジャブは、初めてのはずなのに経験したように感じる既視感です。研究では、過去の景色との配置の似かよりや、具体的な想起を伴わない親近感が手がかりになっています。
一方、次が分かるという感覚が強くても、予測能力が高まったとは限りません。不思議さを大切にしながら、感覚と実験結果を分けてみると、身近な体験の見え方も変わってきます。
身近な不思議を科学から考える記事として、蜃気楼の仕組みと、景色が伸びて見える理由もあわせてどうぞ。


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