鍾乳洞のでき方は?鍾乳石・石筍の違いと水がつくる地下世界の謎

鍾乳洞の天井から下がるつらら石と床から伸びる石筍、上下がつながった石柱

天井から垂れ下がる石のつらら、床から伸びる塔、滝が固まったような壁。鍾乳洞(しょうにゅうどう)の中には、誰かが彫刻したような不思議な景色が広がっています。

鍾乳洞のでき方の鍵は、水が石灰岩を「溶かす」働きと、溶けた成分を「再び結晶にする」働きです。同じ水が空間を広げ、石の飾りも育てます。鍾乳石と石筍の違いも含めて、その仕組みを順番に見ていきましょう。

この記事のポイント

  • 二酸化炭素を含む弱い酸性の水が、石灰岩の割れ目を広げます。
  • 洞窟の空間に出た水から二酸化炭素が抜けると、方解石の結晶がたまります。
  • 天井から下に伸びるのがつらら石、床から上に伸びるのが石筍です。

鍾乳洞とは?洞窟と鍾乳石は別のもの

鍾乳洞は、主に石灰岩が水によって溶かされてでき、その内部に鍾乳石が発達した洞窟です。石灰岩を溶かす作用は「溶食(ようしょく)」と呼ばれます。

ここで区別したいのが、洞窟は「岩の中にできた空間」、鍾乳石は「その空間にできる鉱物の堆積物」ということ。地下の穴が広がる過程と、その中でつらら状の石が育つ過程は同じではありません。

国土地理院も、石灰岩の溶食で生じる石灰洞と、地下水の滴下などで鍾乳石が発達した鍾乳洞を説明し分けています。出典:国土地理院「地質を反映した地形」

鍾乳洞のでき方を3段階で解説

1.雨水が土の中で二酸化炭素を取り込む

地中にしみ込んだ水は、土壌中の二酸化炭素を取り込みます。水に二酸化炭素が溶けると炭酸ができ、水は弱い酸性になります。

激しい薬品で岩を一瞬に溶かすような話ではありません。目では分かりにくい小さな変化が、水の流れと長い時間によって積み重なっていきます。

2.石灰岩の割れ目を水が広げる

石灰岩の主な成分は炭酸カルシウムです。二酸化炭素を含む水が割れ目に入り、成分を溶かしながら流れると、小さな水の通り道が少しずつ広がります。

通り道が大きくなると、そこに地下水が集まり、さらに周囲を溶かします。こうして、人が入れるほどの地下空間へと発達していくのが、典型的な鍾乳洞の形成過程です。

3.水位が下がった空間に鍾乳石が育つ

洞窟内の地下水位が下がるなどして空気のある空間ができると、天井から水滴が落ちる場所が生まれます。その水が運んでいた成分から、鍾乳石が成長し始めます。

つまり、最初から巨大な空洞と鍾乳石が一緒に現れるわけではありません。洞窟が広がり、水の通り方や地下水位が変わり、その場所に合った形が育っていきます。出典:JST Science Portal「自然がつくった神秘の空間 鍾乳洞」

鍾乳石のでき方:なぜ水から石が生まれる?

石灰岩の成分を溶かした水が、空気のある洞窟へ出ると、水に含まれていた二酸化炭素が抜けます。すると、水に溶けていた成分から炭酸カルシウムが方解石という鉱物の結晶になって析出します。「析出」は、溶けていたものが固体として現れることです。

炭酸飲料のふたを開けると二酸化炭素が抜けていくのを想像すると、気体が水から離れる様子をつかみやすいでしょう。ただし、洞窟では水と空気の二酸化炭素の濃度差などが関係し、飲料と全く同じ条件ではありません。

洞窟を広げる作用と、石を育てる作用

地中では水が石灰岩の成分を溶かして運びます。洞窟の空間では二酸化炭素が抜け、運ばれた成分が結晶としてたまります。「溶ける場所」と「固体になる場所」の違いが、地下の景色をつくっています。

水滴が来るたびに少しずつ結晶が残るため、形はゆっくり育ちます。単に水が凍ったものでも、乾いた泥が積もったものでもありません。出典:米国国立公園局(NPS)「Speleothems (Cave Formations)」

鍾乳石・石筍・石柱の違いは?比較表で整理

「鍾乳石」は洞窟内の石の飾りを広く指す場合があります。その中でも、形と育つ位置によって名前が分かれます。天井から下がるものを、ここでは「つらら石」と呼びます。

名前 見える場所・形 でき方の特徴
つらら石 天井から下に伸びる 天井や先端の水滴から結晶がたまる
石筍(せきじゅん) 床から上に伸びる 落ちた水滴が床に成分を残す
石柱(せきちゅう) 天井と床をつなぐ柱 つらら石と石筍が成長してつながる
ストロー(鍾乳管) 天井から下がる細い管 中空の管を通って水が流れる
フローストーン(流れ石) 壁や斜面を覆う膜・滝のような形 面を流れる水から結晶が堆積する

形と形成過程の出典:NPS「Speleothems」、NPS「Speleothems (Cave Formations)」

形を見ると、水が「滴っていた」のか「壁を伝っていた」のかも想像できます。同じ成分でも、水の動きが違えば、石の姿も変わるのです。

鍾乳石はどれくらいの速さで成長する?

よく紹介される目安に「100年で1cmほど」があります。JSTの解説でも、環境による違いを前提に、その程度のゆっくりした成長が紹介されています。

ただし、すべての鍾乳石に同じ成長速度を当てはめることはできません。水が運ぶ成分や滴り方、周りの環境が違うためです。大きな石を見て、長さだけから正確な年齢を割り出すこともできません。

観察中に落ちる一滴は小さくても、その繰り返しが石の塔を育てます。鍾乳洞が不思議に感じられるのは、普段の生活では見えにくい長い時間を、目に見える形で示しているからかもしれません。出典:JST Science Portal

鍾乳洞を見るときの3つの注目点

  • 天井と床を見比べる:つらら石の下に石筍があるか、上下がつながっているかに注目します。
  • 水の通り道を探す:点々と落ちる水と、壁を伝う水では、できる形がどう違うかを見ます。
  • 細い管と太い柱を比べる:形の違いから、結晶がたまってきた場所を想像してみます。

見学時は決められた通路や施設の案内に従い、鍾乳石には触れたり傷を付けたりしないようにしましょう。繊細な形をそのまま残すことが、次の人の観察にもつながります。

鍾乳洞のよくある疑問

つららのような鍾乳石は氷なの?

典型的な石灰岩の鍾乳洞で見られるつらら石は、主に方解石からできた石です。形は氷のつららに似ていても、水が凍ったものとは成分もでき方も異なります。

鍾乳洞とブルーホールは関係がある?

ブルーホールには、石灰岩が水に溶かされてできた洞窟などが、海面の上昇で水没したものがあります。地下の空間と海の青い穴をつなぐ鍵も、水が岩を溶かす働きです。詳しくはブルーホールの正体とでき方で解説しています。

まとめ:鍾乳洞は水がつくる石の風景

鍾乳洞のでき方は、水が石灰岩を溶かして空間を広げる段階と、成分が再び結晶になって鍾乳石を育てる段階に分けると理解しやすくなります。石筍や石柱、流れ石の形には、水が通ってきた道筋も表れています。

水が生む不思議な風景をもっと知りたい方は、ウユニ塩湖の鏡張りの仕組みもご覧ください。こちらでは、浅い水面と平らな大地が空を映す鏡になります。

参考資料

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