タマムシはなぜ虹色に輝く?構造色の仕組みと角度で色が変わる理由

枝の上で虹色に輝くタマムシを描いたやわらかな水彩風イラスト

緑色なのに、角度を変えると赤や紫にも見えるタマムシ。金属を磨いたような輝きは、体に塗られた絵の具の色だけで生まれているわけではありません。

タマムシの鮮やかな色を生む大きな鍵は、表面近くにあるごく薄い層が光を反射する「構造色」です。ここでは日本でよく知られるヤマトタマムシを例に、輝きと色の変化をひもときます。

先に答え

  • タマムシの表面には、薄い層が何枚も重なった構造がある
  • 各層で反射した光が重なり、特定の色が強く見える
  • 光が当たる角度や見る方向で、強め合う色が変わる

タマムシの色の正体は「構造色」

構造色とは、目に見えないほど細かい構造と光の相互作用によって生まれる色です。光は波としての性質を持ち、波長の違いが赤や緑、青などの色の違いに対応します。

表面がただ滑らかに光を跳ね返すだけでなく、光の波長に近い大きさの構造があると、特定の波長を強く反射することがあります。吉岡研究室の解説では、タマムシの多層膜やクジャクの微細構造など、さまざまな構造色の例が紹介されています。

薄い層の重なりが、金属のような輝きを生む

ヤマトタマムシの硬い翅を覆う表面付近には、性質の異なる薄い層が重なっています。これを多層膜構造と呼びます。研究発表では、一層の厚さはおよそ100ナノメートル程度と説明されています。100ナノメートルは1ミリメートルの1万分の1です。

光は、それぞれの層の境目で一部が反射します。反射した複数の波がうまく重なると強め合い、合わない波は弱め合います。この現象が光の干渉です。ヤマトタマムシの緑色の部分では、緑の光が選択的に強く反射され、鮮やかな輝きにつながります。吉岡・木下による研究発表資料(PDF)で、層構造と発色の関係が説明されています。

何枚もの薄い板で光を選び出す、と考えるとイメージしやすいでしょう。ただし実際の層は目で見える板ではなく、顕微鏡で調べるほど小さな構造です。

見る角度で色が変わるのはなぜ?

同じ場所を見ていても、光の入射角や見る方向を変えると、層の中を進む光の経路が変わります。すると、反射した波が強め合う条件も変わり、目に届く色が違ってきます。

このように角度によって色合いが変わる性質を虹色光沢(イリデッセンス)といいます。タマムシが瞬時に別の色素を作っているのではなく、同じ構造が光を返す条件が変わっているのです。生物のナノ構造に関する吉岡伸也氏の講演資料(PDF)も、構造色の特徴として角度による色変化を挙げています。

色素の色と構造色はどう違う?

発色の主な仕組みの比較
比べる点 色素による色 構造色
色を生む鍵 分子が特定の波長の光を吸収する性質 微細構造による反射・干渉など
角度との関係 色素の吸収だけなら角度で大きく変わりにくい 角度で色が変わるものがある
タマムシの例 色素も構造内に含まれる 鮮やかな金属光沢に多層膜が重要

「構造色だから色素が一切ない」とは限りません。ヤマトタマムシの研究では、層にメラニン色素が含まれることも示されています。生物の色には、構造と色素が組み合わさって働く例があるのです。

モルフォ蝶やシャボン玉も同じ仕組み?

どちらも光の干渉を考えるうえで身近な例ですが、細かい構造は同じではありません。タマムシの多層膜に対し、シャボン玉は薄い液体の膜、モルフォ蝶は翅の鱗粉にある複雑な構造が発色に関わります。

「全部、虹色だから同じもの」とまとめるより、どんな形の構造が光を扱っているかを見ると自然の工夫が分かります。構造色の多様性は、色材協会誌「生物がもつ多層膜構造と構造色」でも解説されています。

観察するときの3つのポイント

  1. 同じ部分を、少し違う方向から見る。体の模様の違いと、角度による変化を分けて観察します。
  2. 光の向きを意識する。自分だけでなく、光源との位置関係でも見え方が変わります。
  3. 写真の色と肉眼の色を比べる。照明やカメラの設定でも印象が変わるため、写真一枚だけで色を決めつけないのがコツです。

生きた虫を見つけたら、無理につかまず、その場で観察するだけでも十分楽しめます。

よくある疑問

タマムシは暗闇でも光る?

ホタルのような発光とは異なります。ここで説明した輝きは外からの光を反射するものなので、光がない暗闇で自ら明るく光るわけではありません。

構造色なら、絶対に色あせない?

色素が光で変化する場合とは仕組みが違いますが、構造が傷ついたり変形したりすれば、見え方も変わります。「構造色=どんな状態でも永久に同じ色」ではありません。

まとめ:虹色の鍵は、目に見えない薄い層

タマムシの輝きは、多層膜で反射した光が干渉することで生まれます。見る角度で強く反射される光が変わるため、緑や赤、紫が入り交じるように見えるのです。身近な昆虫の表面に、光を扱う小さな仕組みが隠れています。

光がつくる不思議な色に興味があれば、海が青く見える理由や、彩雲と虹色の空の現象の違いもあわせてどうぞ。

参考資料

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