白と黒だけのコマなのに、回すと赤や緑のような色が見える。そんな不思議を体験できるのが、ベンハムのコマです。
隠しインクが出てくるわけではありません。白黒の模様を見たときの、私たちの視覚の働きが関わっています。この記事では、色が見える理由、作り方、見えないときの確認点、そして2026年の研究が示した新しい手がかりを紹介します。
- ベンハムのコマは、白黒の模様から色を感じる「主観色」の代表例。
- 見える色や感じやすさには個人差があり、回転方向などでも変わる。
- 2026年にAIを使った研究が発表されたが、人間の仕組みがすべて解明されたわけではない。
ベンハムのコマとは?白黒なのに色が見える錯視
ベンハムのコマは、白黒の円盤を回転させて観察する実験道具です。代表的な模様は、円の半分を黒くし、白い半分に長さや位置をずらした黒い弧を配置したもの。止まっているときは白黒ですが、回転中には弧のあたりが色づいて感じられます。
このように、無彩色の刺激から色を感じる現象を主観色といいます。「主観」という名前でも、気のせいとして片づけられているわけではありません。条件を変えながら、人がどう感じるかを調べられる研究テーマです。出典:基礎生物学研究所の研究発表(2026年7月17日)
なぜ色が見える?白黒の変化を視覚が処理する不思議
コマが回ると、同じ場所に白い部分と黒い部分が次々とやってきます。目に届く明るさは、時間とともに複雑に変化します。回転方向を逆にすれば、その変化の順序も変わります。
従来は、網膜や視覚経路で色の情報を処理する際の時間的な応答の違いなどが説明として検討されてきました。ただし、「色を感じる細胞の反応速度が違うから」と一言で原因を確定するのは慎重であるべきです。
基礎生物学研究所は、網膜での処理に加え、脳が経験をもとに次の視覚情報を予測する働きも関係する可能性を紹介しています。白黒の変化が、どのように色の感覚につながるのかが、このコマの面白さであり研究課題なのです。参考:研究の背景と今後の展望
2026年のAI研究で何が分かった?「完全解明」との違い
2026年6月16日、上田恭平氏らの論文がScientific Reportsに掲載されました。研究では、動画の続きを予測するように学習した人工ニューラルネットワーク「PredNet」を使用しています。
学習後のモデルに回転する白黒のコマを入力すると、予測画像の中に淡い色が現れました。また、学習動画に含まれる動く物体の色を変えると、出力される色にも違いが生じました。動きと色の結びつきを学ぶことが、主観色に関係するという仮説を考える手がかりになります。
ただし、AIのモデルは人間の脳そのものではありません。研究は、脳の予測処理が関わる可能性を示すもので、網膜の働きを否定したり、人間の色の見え方をすべて説明したりするものではありません。出典:Ueda・Sinapayen・Watanabe「Predictive networks generate motion-induced color illusions」、基礎生物学研究所の解説
ベンハムのコマの作り方:型紙とCDで試す方法
模様を一から描く前に、実験用の型紙を使うと比較しやすくなります。ケニスの実験ページでは、不要なCDまたはDVD、直径17mmのビー玉、テープ、はさみ、型紙で作る方法が紹介されています。
- 不要なディスクの中央穴にビー玉を置き、数か所をテープで固定します。
- 配布されている型紙の外周と中央を切り取り、ディスクの表面に固定します。
- ビー玉を軸としてコマを回し、白黒の弧のあたりを短時間観察します。
貼る面やビー玉の向きは、ケニス「ベンハムのコマを作ってみよう」の写真付き手順と型紙を確認してください。ディスクの反射面ではなく、貼った白黒模様を観察します。
大切なデータの入ったディスクや割れたディスクは使わず、ビー玉は外れないよう固定します。小さな子どもの誤飲に注意し、はさみを使う工程は大人と一緒に行ってください。点滅が苦手な人は観察を控え、違和感があればすぐにやめましょう。
色が見えないときは?回し方と観察条件を比べよう
「必ず赤が見える」といった正解を先に決める必要はありません。ケニスの解説でも、見える色には個人差があるとされています。鮮やかな虹色を想像すると、淡い色の変化を見落とすこともあるでしょう。
| 確認すること | 比べる方法 | 記録したい点 |
|---|---|---|
| 停止と回転 | 止めた状態と回した状態を見る | どの弧に色を感じたか |
| 回転方向 | 時計回りと反時計回りを比べる | 内側と外側の色の違い |
| 回転の速さ | 無理に高速化せず、速さが変わる様子を見る | 感じやすいとき・感じにくいとき |
| 観察する人 | 先に色を教えず、各自で答える | 同じに見えた点と違った点 |
自然科学観察コンクールの入賞研究でも、回転方向や速度を変えた比較と、観察者による違いが報告されています。ただし、そこでの色の順番を全員に当てはめることはできません。自由研究にするなら、一度に多くの条件を変えず、同じ模様で方向だけを変えるなど、比較の軸を一つにすると整理しやすくなります。参考:シゼコン「ベンハムのコマの研究」
よくある疑問
CDの裏面が虹色に見えるのと同じ?
異なる現象です。ベンハムのコマでは、貼り付けた白黒の模様を見て色を感じます。ケニスの解説も、プリズムやCD、シャボン玉で色が生じる仕組みとは区別しています。
写真を撮れば、感じた色もそのまま残る?
目で感じた色と、撮影画像に記録される色を同じとは考えないようにしましょう。シゼコンの研究では、高速で撮影して模様自体には色がついていないことを確認しています。自由研究の記録は、写真だけに頼らず「どこに何色を感じたか」というメモも残すと伝わりやすくなります。
まとめ:ベンハムのコマは「見る」仕組みを考える入口
ベンハムのコマは、白黒の模様の時間的な変化から色を感じる、身近な錯視の実験です。回転方向や条件、人による違いを比べるだけでも、見えている世界が単純な写し取りではないことを実感できます。
2026年のAI研究は、その仕組みを考える新しい手がかりです。分かった範囲と残る謎を区別しながら、まずは自分にはどう見えるのかを観察してみてください。
色の別の不思議を知りたい方は、モルフォ蝶が青く輝く構造色もどうぞ。同じ「色が見える」でも、翅の微細構造と、白黒模様を処理する視覚の働きでは、考える仕組みが違います。


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