光行差とは?星の位置がずれて見える理由と年周視差との違いを解説

星空を観測する望遠鏡と動く地球を組み合わせたイラスト

同じ星を見ているのに、地球の動きによって見える方向がほんの少し変わる。そんな現象のひとつが「光行差(こうこうさ)」です。星が突然横へ動いたわけでも、望遠鏡が壊れたわけでもありません。

光行差は、光の速さが有限であり、観測する私たちも動いているために起こります。地球の公転に伴うものは「年周光行差」と呼ばれます。よく似た名前の「年周視差」とは、星がずれて見える理由が違います。

この記事で分かること

  • 光行差は、観測者の運動によって光の見える方向が変わる現象。
  • 地球の公転では速度の向きが変わるため、星の位置に年周期の変化が現れる。
  • 年周視差は見る場所の違い、年周光行差は観測者の速度が重要。

光行差とは?雨の中を歩く例で考えよう

風のない日に雨がまっすぐ落ちているとしても、自分が前へ歩けば、雨は正面から斜めに降り込むように感じます。傘を少し進行方向へ傾けたくなるのは、そのためです。立ち止まった人と歩いている人では、同じ雨の見える向きが異なります。

国立天文台は、光行差をこの雨と傘の例にたとえています。星から届く光についても、観測者が動いていると、静止した場合とは異なる方向から来るように見えます。出典:国立天文台・暦Wiki「光行差」

ただし、雨と光が物理的にすべて同じというわけではありません。この例は、観測する側の動きが見える方向に関わることをつかむためのものです。光の速度に関する厳密な扱いまで、雨粒の速度の足し算だけで説明しようとしないようにしましょう。

年周光行差はなぜ起こる?地球が公転する向きに注目

地球は太陽の周りを公転しています。公転軌道の上では、地球が進む方向も一年を通して変わり続けます。すると、遠くの星からの光に対して、観測する私たちの運動の向きも変わります。

日本天文学会の天文学辞典は、光行差によって天体が観測者の運動方向側へずれて見えると説明しています。地球の公転によるこの変化が、年周光行差です。ほかに、自転による日周光行差や、太陽系全体の運動に関係するものもあります。出典:日本天文学会・天文学辞典「光行差」

ここで「星の位置が変わる」というのは、空のどの方向に見えるかが変わるという意味です。星そのものの運動である固有運動とは区別します。また、一晩のうちに星が東から西へ動くように見える日周運動とも、同じ現象ではありません。

光行差と年周視差の違いを比較

年周視差も、地球が太陽の周りを回ることによって生じます。ただし、こちらは観測する場所が変わることが原因です。指を顔の前に立て、左右の目で交互に見ると背景に対して指がずれて見えるように、離れた位置から同じ星を見ると方向が変わります。

国立天文台のVERAの解説では、年周視差と星までの距離は反比例し、年周視差を測れば天体までの距離を求められることを紹介しています。出典:国立天文台・VERAの紹介

比べる点 年周光行差 年周視差
主な原因 観測者の速度と光の速さ 観測する場所の変化
地球の公転との関係 進む向きが一年で変わる 見る位置が一年で変わる
星までの距離 年周視差のような距離の反比例則では決まらない 近い星ほど大きい
理解するための例 歩くと雨が斜めに見える 左右の目で指の位置がずれる

同じ公転に伴って現れても、着目するのが速度か位置かで、原因は別です。「一年周期だから同じ」と覚えると混乱します。実際の天体観測では、これらの効果を分けて扱う必要があります。

年周光行差はどれくらい小さい?約20.5秒角とは

年周光行差の代表的な角度の尺度は約20.5秒角です。これは時間の20.5秒という意味ではありません。角度の1度を60分、その1分をさらに60秒に分けたときの「秒」です。

20.5秒角を度に直すと、20.5÷3600で約0.0057度になります。とても小さな方向の差なので、肉眼で空を見上げて星が大きく揺れるような現象ではありません。天体の位置を精密に測る場面で重要になるものです。

また、20.5秒角という値が、どの星でも同じ方向にそのまま現れるわけではありません。見ている天体の方向と地球の運動方向の関係によって、ずれの現れ方が変わります。

星は一年で円を描く?見える軌跡が違う理由

国立天文台は、黄道の極付近の天体はほぼ円、黄道に近い天体ほど細い楕円、黄道付近では直線上を往復するような軌跡になると説明しています。黄道とは、天球上で太陽が一年かけて通るように見える道です。

星が本当に小さな円形の軌道を回っているのではなく、観測する私たちの動きによる方向の変化を、一年分重ねて見たものです。ここでも、観測された模様と天体そのものの運動を分けることが大切です。

光行差は昔だけの話?精密観測で今も必要

光行差は18世紀のブラッドリーによって発見されましたが、現在の天文学でも重要です。欧州宇宙機関(ESA)のGaiaのデータ処理資料では、光行差を考慮するために観測衛星の速度が必要で、視差などの計算には位置が必要だと説明しています。出典:ESA・Gaiaのデータ処理資料

星のわずかな位置の変化から意味を読み取るには、観測者側の動きを理解しておく必要があります。望遠鏡は遠くの宇宙を見る道具ですが、その結果には、動いている地球や衛星の事情も映り込んでいるのです。

光の見える方向に関わる別の現象として、重力によって光の経路が曲がる重力レンズの仕組みも紹介しています。観測する地球の動きが気になる方は、地球が自転する理由もどうぞ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です