枕状溶岩とは?丸くなる仕組みと山の中に海底の岩石がある理由

水中で冷えた枕状溶岩が重なっている様子

山道の崖に、丸い枕を積み上げたような岩石が現れることがあります。人工物にも見えるこの形は、溶岩と水が出会った記録かもしれません。

枕状溶岩(まくらじょうようがん)は、水中で溶岩の表面が急に冷え、内部の溶岩が押し出されながらできる岩石の形です。枕状溶岩のでき方を知ると、今は陸地になった場所に残る、昔の水底の風景が見えてきます。

先に知りたい3つのポイント

  • 水で冷えるのは、まず溶岩の外側。内側はまだ流れています。
  • 殻ができては溶岩が出る動きが、枕のような形を生みます。
  • 海底の火山活動を知る手がかりですが、湖などでもできます。

枕状溶岩とは?玄武岩によく見られる形

枕状溶岩は英語で「pillow lava」と呼ばれます。丸い塊が並ぶだけでなく、横に伸びたチューブや、ソーセージのような形になるものもあります。枕という名前は、柔らかさではなく外見を表しています。

代表的なのは、粘り気の少ない玄武岩質の溶岩です。JAMSTECは、海底で流れ出したマグマが水に冷やされ、外側が固まったあとも内部が流れることで、特徴的な形が生まれると説明しています。出典:JAMSTEC「枕状溶岩で海洋地殻を読み解く」

枕状溶岩のでき方|外は固まり、中は流れる

1.水に触れた表面が急に冷える

高温の溶岩が水中へ流れ出すと、水に接した部分から冷えて薄い殻ができます。ここで大切なのは、溶岩全体が一瞬で固まるわけではないことです。

2.殻の内側に新しい溶岩が送られる

冷えた外側は、内部の熱を逃がしにくくする働きもあります。そのため、殻に包まれた内側では溶岩が流れ続け、新しく送られてくる溶岩によって膨らみます。

3.一部から溶岩が出て、次の枕ができる

殻の弱いところから溶岩が出ると、その表面も水で冷やされます。こうした動きが繰り返され、丸みのある塊が重なっていきます。「水が岩を丸く削った」のではなく、溶岩が流れながら固まったときの形なのです。米国地質調査所(USGS)も、表面の冷却と内部の膨張を枕状の形が生まれる要因として説明しています。出典:USGS「Don’t try to have a pillow fight with these pillows!」

枕状溶岩の断面では何がわかる?

岩石を地層の断面で見ると、外側と内側の違いが手がかりになります。水で急冷された縁にはガラス質の部分ができ、冷えて縮む過程で、中心から外へ向かうような割れ目が見られる場合もあります。

また、内部の溶岩が流れ去って、空洞が残ることもあります。ただし、すべてが空洞になるわけではありません。JAMSTECが紹介する試料でも、中が抜けた部分と、詰まった部分の違いが説明されています。色も一律ではなく、時間がたつうちにガラス質が変化し、赤黒く、あるいは緑がかった色になることがあります。出典:JAMSTEC・枕状溶岩の断面と変質

山の中にあるのはなぜ?昔の水底を知る手がかり

水中でできる岩石が山にあると、不思議に感じます。しかし、岩石ができた場所と、今見つかる場所は同じとは限りません。地球の表面は長い時間をかけて動き、かつて水底でできた岩石が陸上に現れることもあります。

京都府は、枕状溶岩が形成の場を水底と判断する証拠になると説明し、京都市の鞍馬・芹生周辺などにも典型的なものがあると紹介しています。見た目の面白さだけでなく、その土地の成り立ちを読み解く資料なのです。出典:京都府レッドデータブック「枕状溶岩」

ただし、枕状溶岩を見つけたら必ず海だった、と即断はできません。USGSは、海に加えて湖や川などの水中でも形成されると説明しています。海底だったかどうかは、周囲の地層や化石なども合わせて判断します。丸い石を一つ見ただけで認定することもできません。

伊豆で見られる「一色の枕状溶岩」

伊豆半島ジオパークの「一色(いしき)の枕状溶岩」は、陸上で断面を観察できる例です。公式解説によると、海底噴火の溶岩や水底土石流の堆積物を多く含む仁科層群の、溶岩流の一部にあたります。

現地では、一つの丸だけを見るよりも、複数の塊がどう重なり、どちらへ伸びているかを見ると、流れていた溶岩を想像しやすくなります。公式サイトは崖のもろい場所に近寄りすぎないことと、露頭を傷つけない観察を呼びかけています。出典:伊豆半島ジオパーク「一色の枕状溶岩」

枕状溶岩と柱状節理の違い

比べる点 枕状溶岩 柱状節理
注目する特徴 枕やチューブ状の溶岩の形 岩石に入った柱状の割れ目
形ができる主な過程 水中で表面が冷え、内部から溶岩が流れ出す 溶岩などが冷えて収縮する
両者の関係 別の特徴を表す言葉。枕状溶岩の内部に、冷却による柱状の割れ目が見られることもある

どちらも冷却に関わりますが、「溶岩の外形」と「冷却でできた割れ目」に注目する違いがあります。USGSは、枕状溶岩の中にも放射状の柱が見られる例を紹介しています。

まとめ|丸い形は、水と溶岩が出会った記録

枕状溶岩の形を生むのは、外側が冷えても内側が流れ続けるという、冷却と流動の組み合わせです。その姿は、岩石ができた環境を考える手がかりにもなります。

同じ火山由来の風景でも、火山灰などが固まった岩石を侵食が削るカッパドキアの奇岩のでき方とは過程が異なります。また、川底の岩を削ってできる甌穴の丸い穴とも別のものです。形に加えて「いつ、何が働いたのか」を考えると、岩石の風景をもっと楽しめます。

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