タフォニはなぜできる?岩の穴と蜂の巣模様をつくる塩類風化の不思議

海岸の砂岩にタフォニの丸いくぼみが発達した風景

海岸や山の岩肌に、丸い穴がいくつも並んでいることがあります。まるで虫が食べた跡や、石でできた蜂の巣のよう。その不思議な形の一つがタフォニです。

硬そうな岩に、なぜ穴ができるのでしょうか。手がかりは、水に溶けた成分と、小さな結晶の成長にあります。タフォニのでき方、日本で見られる例、蜂の巣模様に残された謎を紹介します。

先に答え
タフォニは、岩の表面にできる風化によるくぼみです。塩類の結晶が育つことで岩がもろくなる「塩類風化」が、重要な働きをすると考えられています。ただし、穴の形や並び方を含め、すべてが一つの仕組みで説明し尽くされているわけではありません。

タフォニとは?岩に開く風化穴

タフォニ(tafoni)は、岩盤や大きな岩の表面にできた穴状の地形を指します。小さなくぼみが並ぶものもあれば、穴同士がつながり、大きなえぐれのようになったものもあります。

米国国立公園局(NPS)の解説では、岩肌の丸みを帯びた開口部が集まり、スポンジや蜂の巣のように見える姿が紹介されています。主に垂直または傾斜した岩の面に見られる点も特徴です。

ここで大切なのは、タフォニは生き物の巣の名前ではなく、岩の形を表す言葉だということ。「虫食い状」と呼ばれていても、その表現だけで虫が掘った穴だと考える必要はありません。

タフォニのでき方:塩類風化が岩をもろくする

タフォニを考えるうえで重要なのが、塩類風化です。塩類というと食卓の塩を思い浮かべがちですが、地質の説明では石膏など、さまざまな成分の結晶も登場します。

ジオパーク秩父の解説は、岩の表面から水が蒸発する過程で石膏などの結晶が成長し、その部分の岩石をもろくすると説明しています。基本的な流れは次のように整理できます。

  1. 水が岩の細かな隙間へ入る。
    水は、溶けている成分を岩の中へ運びます。
  2. 水が蒸発する。
    水分が失われる過程で、塩類の結晶ができ、成長します。
  3. 岩の粒の結びつきが弱まる。
    結晶の成長などによって岩がもろくなり、表面の粒や薄い層がはがれます。
  4. くぼみが発達する。
    岩の表面が一様に減るのではなく、場所によって風化の進み方に差が生まれます。

イメージとしては、波が大きなドリルのように岩を直接くり抜くというより、岩の細かな隙間で起きる変化が、少しずつ表面の形に表れるのです。

なお、塩類風化を「食塩が岩をすべて溶かすこと」と理解するのは正確ではありません。結晶の成長による力など、岩を物理的にもろくする働きにも目を向けると、硬い岩が変化する理由が分かりやすくなります。

なぜ蜂の巣模様になる?分かっていることと残る謎

塩類風化が重要だとしても、「なぜ表面全体が均等に削れず、穴と壁が並ぶのか」という疑問は残ります。

竜串・見残し海岸の蜂の巣状風化を紹介した地学雑誌の解説では、塩類風化によって岩の粒が崩れることが形成に関わる一方、蜂の巣の幾何学的な形が生まれる理由は明確ではないとされています。

同資料は、穴の大きさには岩の隙間の構造や強度、風化にさらされる時間などが関係すると述べています。つまり「塩があるから、必ず同じ模様になる」という単純な話ではありません。

岩の穴には、まだ研究の余地がある
タフォニは仕組みがまったく分からない現象ではありません。一方で、穴の配置や形の違いまで、どの場所でも同じ説明が当てはまるとは限りません。身近な水と結晶がつくる形にも、未解明の部分が残っています。

タフォニとハニカム構造はどう違う?

小さな穴が蜂の巣状に並ぶ形は「ハニカム構造」と呼ばれます。一般向けの案内では、こうした形も広くタフォニとして紹介されますが、研究では大きさや深さによって区別することがあります。

言葉 何に注目する? 読み分けのポイント
風化 岩がもろくなったり、性質が変わったりする作用 岩を変化させる働きの広い呼び名。
塩類風化 塩類の結晶などによる岩の変化 タフォニの形成に関わる重要な作用。
タフォニ 岩の表面にできた穴状の地形 作用ではなく、形成されたくぼみの形に注目した言葉。
ハニカム構造 蜂の巣状に並ぶ、比較的浅いくぼみ タフォニと区別して調べる研究もある。

2018年の日本地理学会発表要旨では、千葉県銚子市の砂岩の石垣を対象に、タフォニとハニカムの深さや岩石の強度が調べられました。この場所では、タフォニのほうがくぼみが深く、岩の強度が低い結果でした。

研究では、風化が進んでくぼみが深まり、穴の側壁が壊れることで、ハニカムからタフォニへ変わる可能性が示されています。ただし、一つの調査地の結果を「世界の穴模様はすべて同じ順番で育つ」と広げすぎないことも大切です。

日本ではどこにある?海岸だけでなく内陸にも

タフォニは海岸の奇岩だけに見られるものではありません。内陸の岩にも、塩類の結晶が関わる風化の姿が紹介されています。

  • 埼玉県小鹿野町・法性寺
    ジオパーク秩父では、観音堂や奥の院の岩窟に見られる蜂の巣状の穴をタフォニとして紹介しています。海から離れた場所の例です。
  • 和歌山県古座川町・牡丹岩
    南紀熊野ジオパークの解説によると、火山灰などが固まった岩が風化し、無数の穴や牡丹の花のような形が見られます。水の蒸発時に石膏などの結晶ができ、表面がはがれると考えられています。
  • 高知県・竜串・見残し海岸
    地学雑誌では、砂岩に発達した蜂の巣状風化が紹介されています。海水のしぶきが届き、強い波の侵食が比較的弱い場所という環境にも注目されています。

名前や形が似ていても、岩の種類と周囲の環境はさまざまです。観察するときは、穴だけでなく、岩肌の粒や層の向き、海や水との位置関係も見てみると面白いでしょう。岩を削ったり、薄い縁をつついたりせず、案内に従って眺めてください。

よくある疑問:できるまで何年かかる?

写真だけから、穴ができるまでの年数を言い切ることはできません。岩の強さや水分、塩類が供給される条件などが違うためです。また、岩そのものができた年代と、現在の穴が育った期間は別に考える必要があります。

例えば牡丹岩の解説に登場する約1500万年前という年代は、もとになる岩を生んだ火山活動の時代です。「現在見える穴が1500万年かけて掘られた」と、そのまま読み替えることはできません。

岩の形から、目に見えない変化を考えてみよう

タフォニは、水や塩類の結晶などが関わる風化によって育つ、岩のくぼみです。蜂の巣に似た模様の背景には、硬い岩が少しずつもろくなる働きと、場所ごとに異なる条件があります。

岩の不思議な形に興味が湧いたら、海岸の丸い巨石を紹介したモエラキボルダーの記事や、巨大な岩体の成り立ちを扱うデビルズタワーの記事もどうぞ。同じ「不思議な岩」でも、形を生む過程を知ると、景色の見え方が変わってきます。

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