カッパドキアの奇岩はどうできた?キノコ岩と「妖精の煙突」の謎

帽子状の岩を載せたカッパドキアの奇岩群

細い岩の柱に、大きな帽子のような石が載っている。トルコのカッパドキアには、誰かが並べたような不思議な奇岩が広がっています。「キノコ岩」「妖精の煙突」と呼ばれる姿を見ると、なぜ倒れずに残っているのか気になりますよね。

カッパドキアの奇岩のでき方を理解する鍵は、火山が用意した岩の層と、削られやすさの違いです。自然がどのようにこの景色をつくったのか、順番にたどってみましょう。

先に答え
火山灰などが堆積してできた岩の層が、雨水や風、氷などの作用で削られました。帽子をかぶったタイプでは、上の削られにくい岩が下の岩を守り、周囲との差によって柱状の形が残ります。岩がキノコのように生えてきたわけではありません。

カッパドキアの奇岩はどこにある?

カッパドキアは、トルコ中部のアナトリアにある地域の名前です。奇岩の景観で知られるギョレメやユルギュップなどには、円すい形の岩や、帽子の載った柱、岩を掘ってつくられた建物が見られます。

英語でfairy chimneysと呼ばれるのは、「妖精の煙突」という意味。実際に煙が出る設備ではなく、風変わりな形に付けられた呼び名です。すべてが同じキノコ形ではなく、帽子の目立たない細い塔や、ひだのある谷なども景観の一部です。参考:トルコ公式観光サイト「Cappadocia」

カッパドキアの奇岩のでき方を3段階で解説

1.火山の噴出物が、地形の材料になった

最初から岩がキノコの形で噴き出したわけではありません。周辺の火山活動によって、火山灰や軽石、岩片などが広い範囲に積もり、長い時間をかけて岩の層になりました。

火山灰などが固まった岩は凝灰岩と呼ばれ、火砕流の堆積物なども地域の地質をつくっています。カッパドキアの侵食を調べた地形学の研究論文でも、火山起源の堆積物が異なる速さで削られることが、この景観と結び付けて説明されています。

2.雨水などが岩を削り、谷を刻んだ

地面を流れる水は、割れ目や低い場所などを通り、崩れた物質を運び去ります。風や氷の作用も加わり、かつてつながっていた岩の層に谷や溝が刻まれていきました。

岩が壊れたり性質が変わったりする「風化」と、削られた物質が運ばれる「侵食」は、一緒に景色を変えていきます。「風だけが彫った彫刻」と覚えるより、水を含む複数の作用が、長い時間働いた地形と見るほうが実態に近くなります。トルコ文化観光省のユルギュップの説明も、水と風による侵食を挙げています。

3.削られにくい部分が残り、帽子と柱になった

岩の層は、どこも同じように削られるわけではありません。帽子型の奇岩では、上の岩が比較的削られにくく、下には削られやすい岩があります。上の岩に守られた部分が、周囲より長く残ることで、柱が目立つようになります。

雨のときに小さな屋根が下を守る、と想像すると分かりやすいでしょう。ただし岩の帽子は、下の柱を完全に守る傘ではありません。横からも作用を受けるため、柱も少しずつ変わります。

また、「帽子はすべて玄武岩」と決めつけるのも正確ではありません。トルコ文化観光省のカッパドキアの案内冊子(PDF)では、帽子と本体の材料の違いと、帽子の抵抗力によって残る期間が変わることが紹介されています。

キノコ岩の「帽子」と「柱」は何が違う?

注目する部分 地形を見るポイント
上に載る帽子 下の岩に比べて削られにくい部分が残っている
下の柱・円すい状の本体 凝灰岩などからなり、周囲と違う削られ方をして残った
周囲の谷や溝 物質が削られ、運ばれて低くなった場所
形のばらつき 岩の層や割れ目、侵食の進み方が一様ではないことを示す

このように、材料によって削られる速さが違うことを「差別侵食」といいます。「硬い・柔らかい」という説明は入り口ですが、実際には岩のまとまり方や割れ目なども関係します。似た柱状地形の一般的な仕組みは、米国国立公園局のTwin Rocksの解説でも紹介されています。なお、そちらの岩の種類や年代が、カッパドキアと同じという意味ではありません。

奇岩の形は自然、内部の部屋は人が掘ったもの

岩に窓や出入り口のような穴があると、柱全体も人がつくったように感じるかもしれません。けれども、岩の地形ができる過程と、その内部を利用する営みは分けて考える必要があります。

自然がつくった地形を、人々が住居や教会などに掘り広げて利用してきました。岩を掘って空間をつくる文化と、侵食による自然の景観が重なっているのが、この地域の特徴です。

「ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群」は1985年に世界遺産に登録されました。UNESCOの登録情報では、侵食地形の美しさとともに、岩窟の聖堂や住居などの文化的な価値が説明されています。

なぜ今も残っている?永遠に同じ形ではない

帽子が下の岩を守ることは、侵食が止まることとは違います。岩が崩れたり、帽子が失われたりすれば、姿は変わっていきます。「自然が完成させた彫刻」というより、長い変化の途中を私たちが見ているのです。

UNESCOも、特徴的な地形をつくった侵食が、今後も新たな岩の柱などを生む一方、岩窟の文化財を損なう可能性を指摘しています。同じ作用が、不思議な姿をつくり、やがて変えていくことになります。

岩の形から、景色ができた時間を読む

トルコの自然景観でも、パムッカレの白い石灰棚と、カッパドキアの奇岩では、見た目もでき方も異なります。また、岩の表面に小さな穴が並ぶタフォニを知ると、同じ「削られた岩」にも多様な姿があることに気付けます。

カッパドキアの写真を見るときは、帽子だけでなく、下の柱や周囲の谷にも注目してみてください。どこが守られ、どこが削られたのか。その関係が分かると、キノコのような岩が、火山と侵食の長い物語に見えてきます。

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