コリオリの力とは?北半球で右に曲がる理由と台風・排水の渦を解説

地球の海と大規模な雲の流れを描いた水彩風イラスト

台風の雲はなぜ渦を巻くのでしょうか。「地球が回っているから」と聞いても、風がどうして曲がるのか、すぐには想像しにくいかもしれません。

コリオリの力とは、回転する場所から物体の動きを見るときに現れる「見かけの力」です。地球上では風や海流などの大きな動きを理解するために欠かせません。北半球では右、南半球では左という向きの意味と、台風やお風呂の渦との関係を整理します。

先に押さえる3点

  • 右・左は地図の向きではなく、動いているものの進行方向を基準にする。
  • 北半球で右へ曲げる作用と、低気圧が反時計回りになることは矛盾しない。
  • 家庭の排水の向きは、南北の半球だけでは決まらない。

コリオリの力をわかりやすく:回る台から見ると軌道が曲がる

回転する円盤の上でボールを動かす場面を考えます。外の床に立つ人と、円盤と一緒に回る人とでは、同じボールの通り道が違って見えます。ボールが進む間にも、観察する人の向きや位置が変わるためです。

京都大学の地球流体力学の解説では、上から見て反時計回りに回転する台の上でボールを投げると、台に乗った人には右へカーブするように見える例を紹介しています。この動きを、回る台の上の立場で説明するときに使うのがコリオリの力です。出典:京都大学・地球流体力学の楽しみ

「見かけ」といっても、計算から省いてよいという意味ではありません。私たちも地面と一緒に回っているため、地球に対する風の動きを表すには、自転による効果を含める必要があります。別の物体が横から押している力とは区別して考えましょう。

北半球では右、南半球では左になる理由

地球は西から東へ自転しています。その地表を基準に水平な動きを考えると、北半球では進む向きの右側、南半球では左側へ向きを変える作用が現れます。回転する場所から運動を見るという仕組みは同じでも、地球上の南北で向きが逆になります。

北へ進んでいるなら、その人の右は東です。一方、南へ進んでいるなら右は西です。したがって「北半球の物体は必ず東へ曲がる」と覚えるのは間違いです。進行方向に合わせて、右側も変わります。

北半球での水平な進行方向 右側にあたる方向
北へ進む 東
東へ進む 南
南へ進む 西
西へ進む 北

この表は、動いているものに対してコリオリの力が向く側を示しています。実際の進路をこの力だけで決める表ではありません。風には気圧の差や地面との摩擦なども働きます。

なぜ台風は反時計回り?「右に曲がる」との関係

低気圧の中心に向かって、周囲から空気が集まろうとするところを想像してください。北半球では、その空気が進行方向の右へ曲げられます。中心の南側から北へ進む空気なら東へ、東側から西へ進む空気なら北へ向きを変える作用になります。

四方から集まる流れを合わせると、中心を囲む反時計回りの流れにつながります。「右へ曲がる」は一つ一つの空気の進み方、「反時計回り」は低気圧全体を上から見た回転です。別の見方をしているため、食い違っていないのです。

米国海洋大気庁(NOAA)は、北半球の熱帯低気圧では反時計回り、南半球では時計回りの回転になることを、地球の自転によるこの作用から説明しています。出典:NOAA・熱帯低気圧の回転について

なお、コリオリの力だけで台風が生まれるわけではありません。ここで説明しているのは、発達する大きな低気圧の回転方向に関わる部分です。雲ができる仕組みやエネルギーの供給は、別に考える必要があります。

赤道ではどうなる?速さと緯度で変わる強さ

地球上の水平運動でよく使う近似では、コリオリの加速度の大きさは「2×地球の自転の角速度×速さ×緯度の正弦」で表されます。同じ速さなら高緯度ほど大きく、赤道ではこの水平の転向作用はゼロになります。出典:気象庁・予報技術に関する資料

ここでの「赤道ではゼロ」は、気象で使う水平運動の説明です。鉛直方向の運動などまで含めて、あらゆるコリオリの作用がなくなるという意味には広げないようにしましょう。

また、速く動くものほど作用の大きさは増しますが、観察しやすさには動く時間や距離、ほかの力との比較も関わります。短い距離のキャッチボールと、広い海や大気の流れを同じようには扱えません。

トイレやお風呂の渦は半球で逆になる?

「北半球と南半球では、排水口にできる渦が必ず逆になる」という説明は、日常の水回りには当てはまりません。NOAAは、小さな容器ではコリオリの力が非常に弱く、水の初めの動きや容器の形が渦の方向を決めると説明しています。

浴槽の水をかき混ぜたり、水を流し込む向きを変えたりすると、地球の自転以外の影響が大きくなります。南北の半球だけで家庭の渦の向きを予言することはできません。

ウィスコンシン大学の気象研究者による解説も、大気や海洋の大規模な動きにはコリオリの力が必要な一方、流し台やトイレの排水の回転を説明するには小さすぎるとしています。出典:ウィスコンシン大学・The Weather Guys

コリオリの力と遠心力は同じ?

どちらも回転する立場で運動を説明するときに現れる慣性力ですが、同じものではありません。遠心力は回転軸から外向きに現れます。コリオリの力は、その回転する立場に対して動いている物体の速度と関係し、進行方向に垂直な向きに現れます。出典:日本天文学会・天文学辞典

同じ「回転に関わる力」でも、何を基準にどちらへ向くのかを確かめると混乱しにくくなります。地球の自転を示す別の例は、フーコーの振り子の仕組みでも解説しています。自転そのものが気になる方は、地球が自転している理由もどうぞ。

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