オーロラに音はある?パチパチ聞こえる謎と逆転層の仮説を解説

オーロラが広がる静かな雪原に、音を記録するマイクを置いたイメージ

オーロラを見ていたら、空からパチパチという音が聞こえた――そんな話があります。静かな雪原に広がる光を思うと、耳にも何か届きそうな気がしますよね。

オーロラの音には、録音をもとにした研究があります。ただし、「高い空で光っているオーロラから、その音が直接降ってくる」と説明できるわけではありません。観測されたことと、まだ仮説の部分を分けて見ていきましょう。

先に押さえたいポイント

  • オーロラに関連する音の録音・研究報告はある
  • 地上近くの逆転層で起きる放電が、原因の一つとして提案されている
  • 聞こえた音がオーロラに関連するかどうかは、録音だけでは決まらない

オーロラに音はある?研究されている現象とは

「オーロラの音」と呼ばれてきた体験には、パチパチ、パキパキ、サラサラといったさまざまな表現があります。京都大学が紹介するアラスカでの調査でも、音が聞こえ、録音できたという報告があります。

ただし、この調査の参加者は、録音した音がオーロラに由来するという確証はまだ得られていないと説明しています。音が存在したことと、その原因が特定できたことは、別の段階なのです。出典:京都大学「オーロラから『音』がする?!」(2019年)

一方、フィンランドのアールト大学は、録音と気象・地磁気のデータを組み合わせた研究を発表しています。単なる想像の話として片づけるよりも、「何が音を生み、どの条件で聞こえるのか」を検証する研究テーマとして捉えると分かりやすくなります。

高い空のオーロラから、すぐに音が届くわけではない

目に見えるオーロラは、地上から非常に遠い上空で光っています。光と音では伝わる速さが大きく違うため、もしその高さから音が空気中を伝わってくるなら、光を見た瞬間と音を聞く瞬間は大きくずれるはずです。

例えば、100kmを音速約340m/秒で割るだけでも約294秒、5分近くになります。これは高度による音速の変化や減衰を無視した単純な概算です。実際の音が、そのまま地上まで聞こえることを示す計算ではありません。

京都大学の解説も、上空の発光とほぼ同時に聞こえたという体験を、通常の音の伝わり方だけでは説明できないと指摘しています。出典:京都大学の解説

オーロラが光る仕組みや色については、オーロラの仕組みの記事で詳しく紹介しています。

音の正体の候補は、地上近くの「逆転層」

上空約70~80mで音が生まれるという仮説

アールト大学のUnto K. Laine氏らは、オーロラに関連する音の発生源を、地上に比較的近い高さに求めました。2016年の大学発表では、録音と磁気パルスの測定から約75mの高さが推定され、その高さに気温の逆転層があったと説明されています。

逆転層とは、下側の空気より上側の空気の方が暖かくなっている層です。提案された仕組みでは、この層の周囲にたまった電荷が、地磁気の変化に関連して放電し、短い音を生むと考えます。

つまり、光は遠い上空、音は地上に近い別の場所で生まれる可能性がある、ということです。音源が75m先なら、音が届くまでの時間も約0.2秒という短さになります。出典:アールト大学「Acoustics researcher finds explanation for auroral sounds」(2016年)

すべての体験を説明しきったわけではない

同大学の発表でも、この仮説はほかの仕組みを排除するものではないとされています。「オーロラの音の正体は完全に解明された」と言い切ると、研究の範囲を広げすぎてしまいます。

特定の条件で得られたデータを説明するモデルと、昔から報告されてきた多様な音の体験すべてを説明することは、分けて考える必要があります。

オーロラが見えなくても、関連する音が出る?

2022年のアールト大学発表では、目に見えるオーロラがなかった夜の録音でも、音の候補と地磁気の変化に関連が見られたと報告されています。

これは「鮮やかなオーロラが出た日だけ音が生じる」という単純な見方を見直す材料です。ただし、静かな夜に聞こえた音を何でもオーロラの音と呼べるわけではありません。研究では、音と別に測った地磁気データを比較して検討しています。出典:アールト大学「The aurora borealis can be heard even when they can’t be seen」(2022年)

自然の音・電波を音にしたもの・映像のBGMの違い

動画のタイトルに「オーロラの音」とあっても、何を収録したものかは確認が必要です。

音の種類 何を聞いている? 確認したい点
現地で録音された音 マイクに届いた空気の振動 録音条件と周囲の雑音、原因の検証
電波・観測データを変換した音 人が聞ける形にした信号や数値 どのデータを、どう変換したか
映像に付けた効果音・BGM 制作者が編集で加えた音 現地録音と混同しないこと

音への変換自体にも、観測データの特徴を理解する意味があります。ただ、現地の人が耳で聞いた音と同じものとは限りません。関連する考え方は、宇宙で音は聞こえない?NASAの「宇宙の音」とはでも解説しています。

もし音が聞こえたら、何を記録すると役立つ?

  • 日時・場所・天候:風、気温、周囲の環境も残します。
  • 光との時間関係:光の動きに対して、いつ音がしたかを記録します。
  • 周囲の音:衣服の擦れ、雪や氷、木々、車、動物の音も確認します。
  • 元の録音:加工前のデータを残し、編集した場合は内容を明記します。

これは自分で原因を確定するためのチェックリストではありません。あとで検討できる情報を増やすためのものです。寒い場所での観察では、防寒と安全を優先し、音を探すために無理な場所へ入らないようにしましょう。

よくある疑問

オーロラを見れば、必ず音も聞こえる?

必ず聞こえるとはいえません。音を生む条件、聞き取れる大きさ、周囲の雑音などは、光が見える条件と同じではありません。

聞こえない人は、耳が悪いの?

聞こえなかったことだけで、聴力について判断はできません。そもそもその場で音が生じたかどうかも、観測なしには分からないためです。

まとめ:オーロラの音は、光とは別の仕組みを探る謎

オーロラに関連する音には録音と研究報告があり、地上近くの逆転層での放電という仮説が提案されています。一方、すべての音の体験が説明されたわけではありません。

「音を録れた」「オーロラと関連する」「原因が分かった」という段階を分けて見ると、研究の面白さがよく伝わります。美しい光だけでなく、その下の大気にも謎が残っているのですね。

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