雨氷とは?枝が透明な氷に包まれる仕組みと霧氷・樹氷との違い

透明な雨氷に包まれた木の枝と小さなつらら

冬の森で、木の枝がガラス細工のように透き通って見えることがあります。雪が積もった白い枝とは違い、茶色い樹皮の外側を透明な氷が覆っています。この不思議な現象が雨氷(うひょう)です。

雨なのに氷になるのはなぜでしょうか。鍵は、氷点下でも液体のまま存在する水滴にあります。雨氷のでき方と発生条件、名前の似た霧氷・樹氷との違いを見ていきましょう。

先に答え
雨氷は、雨や霧雨が木や地面などに付いて凍り、一般に透明な氷の層になったものです。代表的には、氷点下でも凍っていない「過冷却」の雨が関わります。空から氷の粒が降る、ひょうや凍雨とは区別されます。

雨氷とは?「降ってくる氷」ではなく、付着してできる氷

雨氷の特徴は、枝や電線などの輪郭に沿って氷が付くこと。氷に包まれた枝の中に樹皮が透けて見える姿は、透明なカバーをかけたようにも見えます。英語ではglazeやglaze iceと呼ばれます。

ここで分けて考えたいのが、降るものと、降った後にできるものです。着氷性の雨は液体の水滴として落ち、物体に触れて凍ります。雨氷は、そのようにして地物にできた氷の層を指します。米国気象局の用語集「Glaze」も、凍結する降水によって地面や露出した物体を覆う氷と説明しています。

雨氷のでき方を決める「過冷却」とは

水は0℃を下回ると、必ずすぐ凍るの?

水は0℃で凍る、と習いますが、温度が下がった瞬間に必ず氷になるわけではありません。氷の結晶ができ始めるきっかけがない場合、0℃より低くても液体の状態が保たれることがあります。これが過冷却です。

過冷却の水滴が冷えた枝などにぶつかると、凍り始めるきっかけができます。「雨に氷を混ぜる」のではなく、液体として届いた水が、その場で氷へ変わるのです。長野地方気象台「春の特徴」は、過冷却した水滴が地上の物体に当たって凍る過程を紹介しています。

上空に暖かい空気、地表付近に冷たい空気がある場合

雨氷をもたらす代表的な状況は、空気の温度が高さによって違うときです。上から下へ、次のような流れが起こります。

  1. 上空から降ってきた雪が、途中の0℃より暖かい層で解けて雨になる。
  2. 雨が地表付近の氷点下の層へ入り、液体のまま冷やされる。
  3. 地上の冷えた枝や道路などに当たり、氷の膜をつくる。

もし落下中に再び凍って氷の粒になれば、凍雨になります。地上に届くまで液体でいるかが、雨氷との違いを考える手がかりです。参考:米国気象局「Sleet, Freezing Rain, and Snow」

この温度配置は代表例で、雨氷の発生を地上の気温一つから決められるわけではありません。上空の空気の層、水滴の状態、付着する物体の温度も関わります。「氷点下で雨が降れば、どこでも必ず同じ氷が付く」とは言えないのです。

雨氷・霧氷・樹氷の違いを比較

似た言葉が並びますが、すべてが同じ階層の名前ではありません。気象観測上の分類では、霧氷には樹霜・樹氷・粗氷の3種類があります。樹氷は霧氷の一種です。

名前 主なでき方 見た目の目安・位置付け
雨氷 雨や霧雨が地物に付着して凍る 一般に均質で透明な氷の層
霧氷 種類により霧・雲の水滴や水蒸気が関わる 白色〜半透明の付着氷の総称
樹氷 主に過冷却した霧粒や雲粒が付着して凍る 白く不透明でもろい。霧氷の一種
樹霜 主に水蒸気から氷の結晶ができる 針状・板状などの結晶。霧氷の一種

参考:気象庁「船舶気象観測指針」大気現象の説明(PDF)

雨氷は透明、樹氷は白い、という対比は入り口として役立ちます。ただし、粗氷は半透明や透明に近い塊になることもあります。写真の色だけで断定するより、雨が降っていたのか、霧や雲の中だったのかを合わせて考えるほうが確かです。

雨氷は日本でも見られる?八ヶ岳の観察例

雨氷は海外だけの現象ではありません。筑波大学山岳科学センターは、2024年2月22日の八ヶ岳で、枝などが透明な氷に覆われた様子を写真とともに記録しています。その朝の冷え込みは−2.1℃とされ、雪ではなく雨による着氷が紹介されました。

この記録は日本で起こる実例ですが、「−2.1℃になれば雨氷ができる」という基準ではありません。その日の観察値と、発生に必要な条件全体とは分けて読むことが大切です。参考:筑波大学山岳科学センター「2月の冷たい雨の影響」

長野地方気象台も、春先に低気圧が通る際、県内の標高1,000m前後を中心に着氷の被害が出る場合があると説明しています。厳冬期の特定の一日だけでなく、暖かい空気と冷たい空気が重なる季節の変化にも関わる現象です。

美しい雨氷が、枝折れや路面凍結を起こす理由

氷が付けば、その分だけ枝や電線に重さが加わります。透明な見た目から軽そうに感じても、厚く付けば負担になります。筑波大学の観察記録にも、着氷・着雪による木の損傷が報告されています。

地面にできた氷は、歩行や車の移動にも影響します。長野地方気象台は、雨氷に伴う倒木、電車の運休、路面の凍結などを挙げています。枝の氷を撮影する際は真下に入らず、凍った路面や落下物を避け、安全な場所から眺めましょう。

同じ冬の氷でも、「何がどう変わったか」が違う

雨氷は、液体の水が付着して氷になる現象です。一方、霜柱では土の水分から氷の柱が育ち、雪まくりでは積もった雪が転がって巻かれます。同じ白や透明の景色でも、形ができる道筋はさまざまです。

木を包む氷を見つけたら、「雪が凍ったのかな」で終わらず、雨・霧・水蒸気のどれが関わったのかを考えてみてください。透明な枝の向こうに、上空から地表までの空気の変化が見えてきます。

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