アイキャッチはAI生成の概念イメージです。青い部分はダークマターの分布を表現したもので、実際に青く光る物質を撮影した画像ではありません。
宇宙には、望遠鏡で直接見ることができないのに、銀河の動きに大きく関わっていると考えられるものがあります。それが「ダークマター(暗黒物質)」です。
ダークマターの正体は、まだ確定していません。光では捉えにくい一方、重力を通じて天体の運動などに影響する物質と考えられています。存在を支える観測と、何でできているかの解明は、別の段階です。
この記事では、見えない物質をどう調べるのか、どんな候補があるのか、ダークエネルギーと何が違うのかを順番に説明します。
ダークマターとは?黒い雲や宇宙の暗闇とは違う
ダークマターは日本語で「暗黒物質」と呼ばれます。ただし、黒い色の物質が宇宙を覆い隠している、という意味ではありません。通常の物質のように光を出したり反射したりする方法では捉えられないことから、この名が付いています。
普通の黒い紙は、光を吸収するため黒く見えます。ダークマターの「暗い」は、それと同じ仕組みを表す言葉ではありません。光との関わりが極めて弱いと考えられ、重力の影響を手がかりに調べるのが特徴です。
宇宙の背景が黒く見える理由も別です。空の暗さについては、宇宙はなぜ暗い?太陽があるのに空が黒い理由で解説しています。
見えないのにダークマターの存在がわかるのはなぜ?
① 銀河の外側の天体が、予想より速く回っている
天体の運動は、周囲にどれだけ質量があるかに左右されます。渦巻銀河で星やガスの運動を測ると、外側の回転速度が、観測できる通常の物質だけから予想されるより大きい場合があります。
国立天文台は、この運動を説明するには、光で見える物質に加えて、外側まで広がる見えない質量が必要になると解説しています。これがダークマターを考える重要な手がかりです。
たとえば、見えない相手と綱引きしている人の動きを見れば、反対側にも力が働いていると推測できます。これは理解のためのたとえですが、姿そのものではなく、他のものへの影響を測るという考え方は共通します。
② 重力レンズで、質量の分布を調べられる
大きな質量があると、背景の遠い銀河から来る光の道筋が曲がり、銀河の像が伸びたりゆがんだりします。この現象が「重力レンズ」です。
像のゆがみを測ることで、途中にある質量の量や分布を推定できます。光っている星やガスだけでは説明できない質量がある、という結果は、銀河の回転とは別の手がかりになります。
ダークマターの地図として紹介される画像の色は、推定した分布を見やすく表現したものです。「青いダークマターを撮影した」と読み違えないことが大切です。
③ 宇宙全体の観測とも照らし合わせる
銀河や銀河団の運動だけでなく、宇宙初期の光である宇宙マイクロ波背景放射の細かなむらや、銀河が大きな尺度でどう分布しているかも調べられています。
一つの奇妙な写真から想像しているのではなく、異なる観測をまとめて説明できるかが問われます。ダークマターを含む宇宙のモデルは、そのための有力な枠組みです。
ダークマターの正体の候補は?
正体の候補には、まだ見つかっていない粒子などが挙げられています。以下は研究されている例であり、いずれかに決まったわけではありません。
| 候補 | どんな考え? | 注意点 |
|---|---|---|
| WIMP(ウィンプ) | 通常の物質と弱く相互作用する、質量を持つ仮想的な粒子の一群 | ダークマターとしての発見は確定していない |
| アクシオン | 素粒子物理の問題から提案された、非常に軽い仮想粒子 | 候補であり、存在や寄与の確認が必要 |
| 原始ブラックホール | 宇宙のごく初期に生じた可能性があるブラックホール | 通常の恒星が崩壊してできるものとは区別する。観測による制約がある |
ダークマターが一種類だけからできているとも限りません。候補を提案すること、実験で手がかりを得ること、その候補が宇宙のダークマターを説明すると確認することは、それぞれ別です。
ダークエネルギーとの違いは?
「ダーク」という言葉が共通していても、ダークマターとダークエネルギーは同じものではありません。ダークマターは、銀河などの重力を説明する見えない物質。ダークエネルギーは、宇宙の膨張が加速していることに関わる未知の成分に付けられた名前です。
標準的な宇宙モデルでは、宇宙の質量とエネルギーの内訳は、およそ通常の物質5%・ダークマター27%・ダークエネルギー68%と見積もられます。
ここでの割合は「宇宙空間の何%を埋めるか」という体積の割合ではありません。また、ダークエネルギーを除いて物質だけで比べると、ダークマターは通常の物質の約5倍になります。「27%なのに大半?」という疑問は、何を合計としているかで整理できます。
ダークマターはどうやって探している?
主な方法は、物質とのまれな反応を検出器で捉える直接探索、候補粒子の反応などで生じる信号を宇宙で探す間接探索、加速器で新しい粒子の手がかりを探す方法です。
CERNでは、衝突の後に見える粒子だけではつり合わないエネルギーや運動量が、新しい粒子の手がかりになりうると説明しています。ただし、見えない粒子の兆候があれば即ダークマターと決まる、という意味ではありません。
探索で信号が見つからなくても、試した条件では候補が存在しにくい、と絞り込めます。一つの実験の不検出だけで、あらゆるダークマターを否定したことにはなりません。
ダークマターについてよくある疑問
反物質と同じもの?
違います。反物質は、電子に対する陽電子のように、通常の粒子と対応する性質を持つものです。ダークマターは、主に重力の効果から推定される未知の物質を指します。
ブラックホールが全部ダークマターなの?
そうは言えません。初期宇宙に生じた原始ブラックホールは候補の一つですが、ブラックホールという名前の天体をすべて足せば解決するわけではありません。
存在を推定できるのに正体は不明、というのは矛盾?
矛盾ではありません。「重力の働きとして何が必要か」と「その実体がどんな粒子か」は異なる問いだからです。ただし、観測結果の解釈には理論やモデルが関わります。科学では、複数の観測と実験で説明を検証し続けます。
ダークマターの謎は「影響」と「正体」を分けるとわかる
銀河の回転や重力レンズなどは、光で見える通常の物質だけでは説明しにくい重力の存在を示します。一方、それを担う物質の正体はまだ確定していません。宇宙の姿を支えるものの多くが未知だという点に、この研究の面白さがあります。
銀河について続けて知りたい方は、天の川の正体は?白い帯に見える理由もどうぞ。
参考資料
- 国立天文台「ダークマター」(銀河の回転と宇宙規模の観測)
- NASA「Dark Matter」(重力レンズ・正体の候補・成分比)
- CERN「Dark matter」(光との関わり・加速器による探索)
- CERN「OSQAR」(アクシオンの探索)


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