砂漠の中に、船の船体を並べたような細長い丘が続く。人が整えたようにも見えるこの風景は、ヤルダンと呼ばれる地形です。
砂漠の丘というと、砂が積もった砂丘を思い浮かべるかもしれません。しかしヤルダンは、主に地面が風によって削られ、残った部分が丘になったもの。でき方に大きな違いがあります。
この記事では、ヤルダンとは何か、風が岩を削る仕組み、丘が同じ向きに並ぶ理由を解説します。実は、地球だけでなく火星にも見つかっている地形です。
- ヤルダンは、風の侵食で形づくられる細長い丘。
- 砂が積もる砂丘とは違い、周囲が削られることで残る。
- 地形の向きは、長い時間働いた風を考える手がかりになる。
ヤルダンとは?砂漠に並ぶ流線形の丘
ヤルダン(yardang)は、風の侵食によってできる、流線形の細長い丘や尾根です。平面から見ると、しずくや船の船体のような形をしたものがあります。
似た方向に長く延びる丘と、その間の低い部分が繰り返される景色が特徴です。ただし、すべてが同じ大きさや形になるわけではありません。材料となる地層の性質、風の働き方、侵食の進み具合などで姿が変わります。
NASAが紹介するゴビ砂漠の例でも、小さな平行な尾根が並び、船体やクジラの背を思わせる形として説明されています。空から眺めると、細長さと向きのそろい方がよく分かります。
参考:NASA「Gobi Desert Yardangs」宇宙飛行士撮影画像の解説
ヤルダンのでき方:風と砂粒が地面を削る
砂粒が当たって、表面を少しずつすり減らす
風は、ただ空気を動かすだけではありません。砂粒などを運び、地面や岩の表面へぶつけます。運ばれた粒子が繰り返し当たることで、表面が少しずつ削られます。
これを身近な感覚でいえば、細かい粒による研磨のような働きです。一度の風で大きな丘が完成するのではなく、風が地表へ作用する時間の積み重ねが、特徴的な形につながります。
細かい物質が吹き払われ、残る部分が目立つ
さらに風は、細かい粒子を地面から取り去って運びます。粒子がぶつかって削る作用と、吹き払って運び去る作用の両方が、地形の変化に関わります。
周囲より侵食に耐える部分が残れば、そこが丘や尾根として目立ちます。「砂が上へ積まれた」のではなく、「周りの材料が取り去られた」と考えるのが、ヤルダンを理解する鍵です。
米国地質調査所のカリフォルニア州ロジャース湖の研究では、風洞実験で形の変化を調べ、風上側での摩耗や、側面・風下側での粒子の除去、空気の流れの関与が検討されています。
参考:米国地質調査所(USGS)「Evolution of the yardangs at Rogers Lake, California」
なぜ細長く、同じ向きに並ぶの?
ヤルダンの長い向きには、その場所で地形を削ってきた風の方向が関わります。風がある方向に繰り返し作用すると、材料の削られ方にも方向性が生まれ、丘と溝がそろった景観になります。
典型的な形では、風を受ける側が比較的丸く、風下へ向かって細く延びます。このため、ヤルダンは自然の風向計のような手がかりとして研究に使われます。
ただし、写真の長軸を一本見ただけで、どの場所でも風向きを断定できるわけではありません。丘の形、地層、周囲の砂の分布などを組み合わせ、地形をつくった風の履歴を考えます。
今その場で吹いている風と、長い時間をかけて地形を刻んだ風も、分けて考える必要があります。地形は瞬間の天気ではなく、過去から続く作用を残しているのです。
参考:NASA JPL「Yardangs: Nature’s Weathervanes」
ヤルダンと砂丘の違いを比較
どちらも風に関わる地形ですが、主に注目する働きが異なります。丘の外見だけでなく、「材料が増えたのか、取り去られたのか」を考えてみましょう。
| 比較する点 | ヤルダン | 砂丘 |
|---|---|---|
| 基本となる働き | 風による侵食 | 風が運ぶ砂の堆積 |
| 丘の成り立ち | 周囲が削られ、相対的に残る | 運ばれた砂が積み重なる |
| 観察の手がかり | 削られた地層や細長い尾根、間の溝 | 砂の斜面や稜線、砂の移動 |
実際の風景では、侵食と堆積が同じ地域で起きます。ヤルダンの間や斜面に砂がたまる場合もあるため、「砂が見えるから砂丘」と即断しないことも大切です。
風は削る場所と積もらせる場所をつくります。砂漠の地形を眺めるとき、この二つの役割を意識すると、同じ茶色い丘でも成り立ちの違いが見えてきます。
参考:米国国立公園局(NPS)「Aeolian (Dunes) Landforms」
ヤルダンはどこにある?地球と火星の共通点
地球では、ゴビ砂漠やモハーベ砂漠などの乾燥地域でヤルダンが研究されています。植物や土壌の覆いが乏しく、風が地表へ働きやすいことは、形成を考えるうえで重要です。
そして火星でも、探査機の画像から、同じ方向に延びるヤルダンが観測されています。NASAの画像解説には、層をなす地形が風で削られ、尾根の間に暗い砂が見られる例が紹介されています。
形が似ているからといって、地球と火星の環境がすべて同じという意味ではありません。それでも、地球で調べた侵食の仕組みは、遠い惑星の風景を理解する手がかりになります。
岩に残った形から、直接見ていない風の働きを探る。ヤルダンは、大地の歴史と惑星の環境をつなぐ地形なのです。
参考:NASA「Layered Yardangs (3-D)」
まとめ:ヤルダンは、風に削られて残った丘
ヤルダンは、風が運ぶ粒子による摩耗や、細かい材料の除去によって形づくられる細長い丘です。砂が積もる砂丘とは、基本的なでき方が異なります。
丘の形や並ぶ向きを眺めると、目に見えない風が長い時間をかけて大地を変える力を感じられます。砂漠の奇景は、地球にも火星にも刻まれた、自然の働きの記録です。
ほかの地形のでき方も気になる方は、水が石灰岩を溶かすカルスト地形の仕組みや、モエラキ・ボルダーの丸い岩の謎もあわせてどうぞ。

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