モエラキボルダーはなぜ丸い?海岸の巨石とコンクリーションの不思議

海岸の砂に埋まる球状のモエラキボルダーと鉱物の筋が見える岩

ニュージーランドの砂浜に、巨大なボールのような岩がいくつも並んでいます。名前はモエラキボルダー。人が削った石球のようにも見えますが、地層の中で生まれた自然の岩です。

なぜこれほど丸いのか、どうして海岸に集まっているのか。鍵になるのは、泥の隙間で鉱物が固まる「コンクリーション」という現象です。

先に答え
モエラキボルダーは、海底の堆積物の中で鉱物が沈殿し、周囲の粒を固めてできた球状の岩塊です。海岸の侵食で周りの軟らかい地層が失われ、硬い丸石が姿を現しました。

モエラキボルダーとは?ニュージーランドの巨大な丸石

モエラキボルダーは、ニュージーランド南島のオタゴ地方、コエコヘ海岸に見られる球状の岩です。「モエラキ・ボールダーズ」「モエラキボルダーズ」などとも表記され、英語ではMoeraki Bouldersといいます。

ニュージーランド政府観光局は、オアマルの南約40kmに位置し、岩は一つで数トン、大きなものは高さ2mほどになると紹介しています。砂に埋まった岩もあれば、割れて内部が見える岩もあり、同じ丸石でも姿はさまざまです。
出典:ニュージーランド政府観光局「モエラキ・ボールダーズ」

正体はコンクリーション|泥の中で粒が固まる

コンクリーションとは、地層の中で鉱物が沈殿し、周囲の堆積物を固めるなどして生じた岩塊です。モエラキでは、炭酸カルシウムの鉱物である方解石が、泥などの粒を結びつける役を果たしています。

ここでいう「固める」は、コンクリートを人が流し込むという意味ではありません。水に溶けていた成分が固体の鉱物として現れ、粒と粒の隙間を埋めていく自然の作用です。地質学では、このように粒が結びつく働きをセメント作用と呼びます。

現地のオタゴ大学も、モエラキの丸石を、海底にたまったシルトや泥の変化・セメント化によるコンクリーションとして解説しています。
出典:オタゴ大学地質学教室「Moeraki boulder: Otago Museum」(PDF)

なぜ丸い?波で削られる前から球状だった

海岸の石というと、波に転がされて角が削れ、丸くなった姿を想像しがちです。しかし、モエラキボルダーの球形を説明する中心は、地層の中で球状のコンクリーションができたことにあります。

球状炭酸塩コンクリーションの研究では、成分が広がる拡散と、鉱物が沈殿する反応が重要とされています。たとえば、有機物に由来する炭素を含む成分が周囲へ広がり、カルシウムイオンと反応すると、その周りの隙間を炭酸カルシウムが埋めていきます。

特定の方向だけに流れるより、中心の周囲へ成分が広がる条件では、反応する範囲も球状になりやすくなります。名古屋大学の研究紹介でも、球状になる理由として拡散現象が挙げられています。
出典:名古屋大学・吉田英一氏の研究紹介「炭酸塩天然コンクリーション形成に学ぶ透水性空隙・亀裂シーリングへの応用研究」

これは球状コンクリーションの成因を理解するための説明です。現地の岩がすべて完全な球体というわけでも、すべての中心に同じ生物の化石が残っているというわけでもありません。

なぜ海岸に並ぶ?周りの地層が侵食されたから

丸石が海岸に現れるまでには、もう一つの段階があります。岩塊を包んでいた地層が地表に現れ、その地層が侵食されることです。

周囲の軟らかい泥岩が削られると、比較的硬いコンクリーションが露出します。最初から砂浜に巨石が置かれたのではなく、地層の中にあったものが、周囲を失って見えるようになったのです。

ニュージーランド自然保護省(DOC)の現地案内も、約6,000万年前に堆積した周囲の泥岩の侵食によって丸石が露出したと説明しています。崖の中に一部が埋まった岩は、その過程を想像する手がかりになります。
出典:DOC「Moeraki Boulders/Kaihinaki Walk」

岩の中のひび割れは何?鉱物が埋めた割れ目

割れた岩をよく見ると、内部を横切る網目のような筋があります。モエラキボルダーは、こうした割れ目を持つセプタリアン・コンクリーションとしても知られています。

1985年の研究論文では、岩塊を方解石のコンクリーションとし、内部に方解石などの鉱物脈があることを報告しています。割れ目に入り込んだ成分が結晶になることで、周りと色や質感の違う筋として残ります。
出典:Bolesほか「The Moeraki Boulders—Anatomy of Some Septarian Concretions」(1985年)

球形だけを見るよりも、岩の表面や内部に残る筋を観察すると、「泥の中で固まった後にも、割れ目と鉱物に関わる過程があった」という時間の重なりを読み取れます。

ほかの不思議な岩との違いを比較

自然の造形 形の特徴 でき方のポイント
モエラキボルダー 巨大な丸石 堆積物の中で鉱物が粒を固める
パムッカレの石灰棚 白い段状の棚 温泉水から鉱物が沈殿して堆積する
ジャイアンツ・コーズウェイ 多角形の石柱 溶岩が冷えて縮むときの割れ目が形をつくる

モエラキボルダーと石灰棚には、水に溶けた成分が固体になる共通点があります。詳しくはパムッカレの白い石灰棚の仕組みをご覧ください。岩の割れ目が生む別の形は、ジャイアンツ・コーズウェイの石柱が六角形になる理由で紹介しています。

モエラキボルダーについてよくある疑問

できるまで必ず何百万年もかかる?

「地層がいつ堆積したか」と「岩塊が固まるまでの時間」は別です。名古屋大学の2018年の研究発表では、国内外の球状コンクリーションを調べ、メートル級でも数年程度で形成されうることが示されています。

ただし、この値をモエラキのすべての丸石にそのまま当てはめ、形成時間を一律に決めることもできません。対象の岩と成分、調べた過程を区別して読むことが大切です。
出典:名古屋大学「球状コンクリーション成因論の一般化に成功」(2018年、PDF)

すべての岩が同じ大きさで、きれいな球形?

大きさや露出の程度は異なり、風化や破損したものもあります。写真では形の整った岩が目立ちますが、崖の中の岩、砂に埋まった岩、割れた岩も、でき方を知る大事な手がかりです。

現地で見るときは何に注目する?

丸さに加え、表面の筋、割れた断面、周囲の地層との境目を見比べると楽しめます。DOCは潮の変化と不意の大波への注意を案内しています。見学時は現地の最新案内に従いましょう。

まとめ|丸石は、古い海の泥が残した自然の造形

モエラキボルダーは、堆積物の中で鉱物が粒を固めてできた球状のコンクリーションです。その後、周囲の地層が侵食され、海岸へ姿を現しました。

丸い外形には成分の広がりと沈殿が、内部の筋には割れ目と結晶の歴史が残っています。砂浜に並ぶ岩を見ることは、かつてそこにあった海底と、地層の中の化学反応をたどることでもあるのです。

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