氷筍はなぜ下から伸びる?氷のたけのこのでき方とつらら・石筍との違い

洞窟の床から上向きに育つ丸い先端の氷筍と天井から落ちる水滴

洞窟の床から、透明な「たけのこ」が何本も伸びている。天井から垂れるつららとは逆向きに育つこの氷は、氷筍(ひょうじゅん)と呼ばれます。

水は上から下へ落ちるのに、どうして氷は下から上へ伸びるのでしょうか。答えは、水が落ちる方向ではなく、水滴が凍って積み重なる場所にあります。

先に答え
氷筍は、天井などから落ちた水滴が床で凍り、その上に次の水滴が凍り重なることで上向きに育つ氷です。水が重力に逆らって上昇する現象ではありません。

氷筍とは?読み方と名前の意味

氷筍の読み方は「ひょうじゅん」。筍はたけのこのことで、床から突き出た姿を氷のたけのこに見立てた名前です。洞窟のほか、冬のトンネルなどでも見られます。

岩手県の内間木洞について、公益財団法人日本交通公社は、天井から滴る水が地面で凍り、たけのこ状に成長すると説明しています。見かけは柱でも、材料は岩石ではなく水が凍った氷です。
出典:日本交通公社「内間木洞の氷筍」

氷筍のでき方|なぜ下から上へ伸びる?

1.天井から水が滴り落ちる

まず、天井や岩の隙間から水が供給されます。日本洞窟学会の解説では、富士山の溶岩洞窟には薄い天井を通って雨水などが入り、冬には天井につららができる場合があるとされています。その先から落ちる水滴が、床の氷筍を育てます。
出典:日本洞窟学会「洞窟豆知識(火山洞窟)」

2.落ちた場所で水滴が凍る

床や周囲が十分に冷えていれば、落ちた水滴はその場所で凍ります。最初は小さな氷の盛り上がりでも、そこへ水が繰り返し落ちると、氷が付け足されていきます。

3.氷の上に氷が重なり、先端が高くなる

いったん盛り上がりができると、次の水滴はその上に落ちます。氷が増える場所が少しずつ高くなるため、全体として上へ伸びて見えるのです。「落ちる水」が「上向きの柱」をつくるのは、落ちた先に材料が残るから、と考えると分かりやすいでしょう。

ただ寒ければよいわけではなく、液体の水が届くことと、届いた水が凍ることの両立が必要です。水の供給が途切れれば、その水滴による成長も続きません。

氷筍・つらら・石筍の違いを比較

姿が似ていて混同しやすいのが、つららと石筍(せきじゅん)です。どこから育ち、何が積み重なっているのかを見ると整理できます。

比べるもの 主な材料 育つ向き できる仕組み
氷筍 氷 床から上へ 落ちた水滴が凍り重なる
つらら 氷 天井・軒などから下へ 垂れる水が凍って伸びる
石筍 主に炭酸カルシウムなどの鉱物 洞窟の床から上へ 水に溶けていた鉱物が沈殿し、積み重なる

石筍は、氷筍がそのまま石に変わったものではありません。米国国立公園局は、滴下した水から炭酸塩などの物質が沈殿し、床の盛り上がりをつくると解説しています。氷筍は水そのものが凍り、石筍は水が運んだ鉱物が残るという違いです。
出典:米国国立公園局「Speleothems」

石筍や鍾乳石が生まれる背景は、鍾乳洞のでき方を解説した記事でも紹介しています。

過冷却水と関係がある?実験で伸びる氷のたけのこ

氷筍を調べると「過冷却水」という言葉も出てきます。これは、0℃より低い温度でも、まだ液体の状態にある水のことです。

日本雪氷学会が紹介する実験では、水を装置の中で冷やして過冷却水にし、雪や氷を置いた受け皿へ落とします。すると、その先に氷筍が伸びる様子を観察できます。冷やし方や流す水の量を変え、形や成長を比べる実験です。
出典:日本雪氷学会「過冷却水を作ろう!く~るクールくん」

実験と自然の条件は分けて考えよう
過冷却水を使うと、氷が伸びる様子を実験で示せます。ただし、この実験だけを根拠に、自然の氷筍はすべて同じ温度・同じ速さで育つとはいえません。自然の説明では、水の供給と凍結する環境を押さえるのが基本です。

氷筍が見られる場所と時期の例

岩手県・内間木洞

内間木洞は冬の氷筍で知られる鍾乳洞です。日本交通公社の紹介には、大きなものは2mを超える例も記されています。普段から自由に入れる観光洞ではないため、見学を考える場合は久慈市の公式案内で公開日や参加条件を確認しましょう。

山形県・栗子隧道

自然の洞窟だけでなく、古いトンネルも氷筍のできる場所になります。米沢市は、旧道の栗子隧道に冬季の氷筍が現れることを紹介しています。

同市の2026年冬のツアー案内では、トンネル内部には入らず、入口から鑑賞する条件でした。これは過去の開催例であり、今後の開催や見学方法を保証するものではありません。訪問時はその年の公式情報を確認してください。
出典:米沢市「神秘の氷筍鑑賞ツアー」

氷筍についてよくある疑問

氷筍は冬ならどこでもできる?

いいえ。冷えることに加え、水滴の供給も必要です。洞窟やトンネルという名前だけで、必ずできるとは限りません。観察できる時期も、場所やその年の状況で変わります。

氷筍は夏になると必ずなくなる?

冬だけ見られる場所がある一方、氷が残りやすい洞窟もあります。日本洞窟学会は、富士山の氷穴で、冬に冷えた洞内へ夏の暖かい空気が入りにくく、氷が残る仕組みを紹介しています。すべての洞窟を同じようには扱えません。

海の中に伸びるブライニクルと同じ?

どちらも氷が伸びる現象ですが、できる環境と仕組みが違います。海氷の下に生まれる氷の管については、ブライニクルの仕組みを解説した記事をご覧ください。

まとめ|水滴が落ちる先で、氷の柱が育つ

氷筍は、天井から届く水滴が床で凍り、少しずつ上へ積み重なったものです。つららと材料は同じ氷でも、成長する場所が違います。石筍とは向きが似ていますが、こちらは鉱物の沈殿でできる別の造形です。

床から伸びる不思議な姿の裏には、水が届き、冷やされ、固体として残るという積み重ねがあります。写真を見るときも、柱だけでなく、その真上の天井や水滴に注目すると、でき方が見えてきます。

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