ジャイアンツ・コーズウェイはなぜ六角形?石柱の仕組みと巨人の伝説

北アイルランドの海岸で、多角形の玄武岩の柱が階段状に海へ続く風景

六角形の石が、まるで人の手で敷き詰められたように海へ続く。北アイルランドのジャイアンツ・コーズウェイは、そんな不思議な景色で知られています。

これは巨人が積んだ石なのでしょうか。地質学の答えは、溶岩が冷えて縮むときにできる割れ目にあります。六角形が多い理由と、巨人の伝説を分けて見ていきましょう。

この記事のポイント

  • 北アイルランドの海岸にある、玄武岩の石柱群です。
  • 溶岩が冷えて収縮し、割れ目が伸びて柱状節理ができます。
  • すべてが同じ大きさの正六角形というわけではありません。

ジャイアンツ・コーズウェイとは?どこにある?

ジャイアンツ・コーズウェイは、英国・北アイルランドのアントリム海岸にある玄武岩の柱の集まりです。「巨人の石道」と訳され、海へと続く敷石のような形が印象的です。

UNESCOの世界遺産紹介では、約4万本の黒い玄武岩の柱からなる景観として説明されています。周辺の海岸を含め、1986年に世界自然遺産に登録されました。参考:UNESCO「Giant’s Causeway and Causeway Coast」

どうやってできた?溶岩が冷えて縮んだ跡

火山活動が、厚い溶岩の層を作った

現在の海岸の風景からは想像しにくいですが、この景観の出発点は古い火山活動です。UNESCOは約5,000万〜6,000万年前の噴火による形成を紹介しています。

溶岩が流れ、冷えて岩になります。その後の長い地形の変化を経て、私たちが見る海岸の姿が現れました。一枚の写真に写る石柱は、一瞬で並べられたものではなく、複数の過程を経た景色なのです。

収縮によって割れ目ができ、柱の形が残る

熱い岩が冷えると、体積が縮みます。周囲との関係で自由に縮めない部分には応力がたまり、割れ目が生じます。その割れ目が内部へ伸びることで、岩が柱のような形に区切られます。

これが柱状節理です。個別の石柱が一つずつ地面から生えてきたのではなく、もともと一続きだった岩が割れて、柱の集まりになったと考えるとわかりやすいでしょう。出典:National Trust「History of Giant’s Causeway」

なぜ六角形が多い?自然が作る割れ目の模様

柱状節理は、冷却による収縮と割れ目の成長によってできる、三次元の割れ目のネットワークです。研究では、それが主に六角形の柱へと秩序化する現象として扱われています。

六角形は隙間なく並べられる形ですが、「隙間なく並べられる形は六角形だけだから」という説明では十分ではありません。三角形や四角形も平面を埋められます。ここでは、岩の冷え方と割れ目の成長過程を一緒に考える必要があります。参考:Goehring・Morris「Order and disorder in columnar joints」

見た目の整い方は、人工物の証拠ではありません。自然の中でも、同じような条件が広い範囲に働くと、規則的な模様が現れることがあります。

すべて正六角形なの?写真で見てみよう

遠くから眺めると、一様な六角形のタイルのように見えます。しかし、柱状節理は機械で切りそろえた石材ではありません。柱の太さや高さ、輪郭の角度などには違いがあります。

「六角形が多い」という説明を、「すべて同じ正六角形」と読み替えないことが大切です。次の点を写真で比べると、自然らしいばらつきも見えてきます。

見る場所 注目する特徴
柱の上面 辺の長さや角度、柱ごとの大きさの違い
柱の側面 平面の模様が、立体的な柱へ続いていること
段差 高さがそろわず、階段のように見えるところ
海岸全体 石柱だけでなく、崖と海との位置関係

何度くらいで割れた?2018年の実験研究

冷えて割れたといっても、常温になってから割れたのでしょうか。リヴァプール大学の研究チームは、この疑問を実験で調べました。

2018年の発表では、アイスランドの火山の玄武岩を使い、冷却中の収縮と破壊を調べています。その結果から、柱状節理を作る割れ目は、およそ840〜890℃という、まだ非常に高い温度で形成されると説明しています。

これは現地の石柱すべてに温度計を入れて測った数字ではありません。試料を用いた実験と、その結果を地質現象に結びつけた研究です。「冷える」という言葉が「触って冷たい」温度だけを指すわけではないことがわかります。出典:リヴァプール大学の研究発表

巨人の伝説と地質学は、別の楽しみ方

「巨人の石道」という名前は、巨人が海を渡る道を作ったという物語と結びついています。National Trustも、景観の成り立ちとともに、巨人にまつわる伝説を紹介しています。

伝説を知ると、その場所を見た人々が、あまりに不思議な石の並びをどのように受け止めたのか想像できます。一方、岩石ができた過程を調べるときは、溶岩・冷却・割れ目という証拠に沿って考えます。

物語を楽しむことと、自然の形成過程を説明することは両立します。片方をもう片方の証明にしないようにすれば、景色の魅力を広く味わえます。

まとめ:巨人の石道は、冷えた溶岩の記録

ジャイアンツ・コーズウェイの石柱群は、火山活動でできた溶岩が冷却・収縮し、柱状に割れることで生まれました。六角形の多さも、自然が作る割れ目の発達と関わっています。

規則的な形の中に、大きさや高さのばらつきを探すと、人工のタイルとは違う面白さが見えてきます。温度が関わる身近な不思議では、熱い面で水滴が浮くライデンフロスト効果も紹介しています。

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