日が沈んだあとの空に、銀色や青白い薄い雲が浮かぶことがあります。「夜光雲(やこううん)」と呼ばれる、非常に高い場所にできる雲です。
夜なのに、なぜ雲が明るく見えるのでしょうか。この記事では、夜光雲が光る理由、日本での観測例、オーロラとの違いを解説します。
夜光雲は、高度およそ80〜90kmにできる氷の粒の雲です。雲そのものが発光しているのではなく、地上では沈んだ太陽の光が高い上空には届き、氷の粒で散乱されるため明るく見えます。日本でも北海道で観測・同定された例があります。
夜光雲とは?地球で最も高い場所にできる雲
夜光雲は、地球の大気の「中間圏」の上部付近にできる、微細な氷の粒からなる雲です。英語ではnoctilucent clouds、極中間圏雲とも呼ばれます。
東北大学の研究解説では、通常の雲がおもに高度10km程度までの対流圏にできるのに対し、夜光雲は高度80〜90km付近に形成されると説明しています。
地面から眺めると普通の薄雲にも似て見えますが、できる場所は大きく異なります。「雲」という同じ言葉でも、私たちの頭上の天気を作る雲より、ずっと宇宙に近い高層大気の現象なのです。
夜光雲はなぜ夜に光る?鍵は太陽と雲の高さ
夜光雲という名前から、ホタルのように自分で光る雲を想像するかもしれません。しかし、明るさのもとは太陽光です。
NASAの夜光雲の解説によると、高い場所にあるため、地上で日没を迎えたあとも雲には日光が届きます。暗くなった空を背景に、その光を散乱する氷の粒が目立つのです。
地球は丸いため、地上と高い上空では、太陽が地平線の向こうに隠れるタイミングが違います。低い場所がすでに影に入っていても、上空の雲はまだ日向にある場合があります。
- 地上では太陽が沈み、空が暗くなり始める。
- 非常に高い場所の夜光雲には、まだ太陽光が届く。
- 微細な氷の粒が光を散乱し、雲が青白く明るく見える。
つまり、夜光雲を見るには、雲ができる条件だけでなく、照明となる太陽と観測する人の位置関係も重要です。真夜中ならいつでも輝いて見える、というわけではありません。
氷の雲なのに夏に多いのはなぜ?
夜光雲は、主に高緯度地域の夏、日没後や日の出前に見られます。「夏なのに氷?」と不思議に思いますが、地上の暑さを、そのまま高度80km以上の温度に当てはめることはできません。
NASAの解説では、夏の中間圏は非常に低温になり、夜光雲ができる条件が整うと紹介されています。大気の温度は、地面から離れるほど単純に下がり続けるものでも、地上と同じ季節変化をするものでもないのです。
氷の粒ができる過程にも研究が進んでいます。前述の東北大学などの2022年の研究では、宇宙から来た微小な隕石に由来する塵の表面に、水が氷として凝縮する仕組みが支持されました。ごく小さな宇宙の物質が、地球の高い空の雲とつながっています。
夜光雲は日本でも見られる?北海道での観測例
日本で見られる可能性はありますが、普通の夕焼け雲のように、日常的に期待できる現象ではありません。
名古屋大学宇宙地球環境研究所の発表によると、2020年6月12〜14日、北海道の陸別・紋別・名寄・サロベツなどの観測施設で夜光雲が捉えられました。複数地点のカメラ画像から、高度約80〜90kmの雲と検出・同定された事例です。
同発表では、2015年6月21日にも北海道で観測・同定されたことが紹介されています。2020年の成果は、国内で初めて連続した日に確認されたという点でも注目されました。
ここでいう「北海道で観測」は、北海道に立つ観測者が雲を捉えたということです。写真の見た目だけで高さや雲の位置を決めるのではなく、複数地点からのデータを使うことが、科学的な確認につながります。
夜光雲とオーロラの違いを比較
どちらも夜空を彩りますが、光が生まれる仕組みが異なります。NASAのオーロラ解説では、高エネルギーの粒子が大気の酸素や窒素と相互作用し、光が放たれることが説明されています。
| 比較点 | 夜光雲 | オーロラ |
|---|---|---|
| 何が見えている? | 高い上空の氷の粒の雲 | 大気の原子・分子などが放つ光 |
| 明るくなる仕組み | 太陽光を散乱する | 粒子から受けたエネルギーを光として放出する |
| 見え方の例 | 青白い薄い筋や波状の模様 | 緑・赤などの帯やカーテン状の光 |
| 判断するときの注意 | 色や写真の明るさだけで断定せず、時刻・方向・動き・観測情報も確認する | |
「青いなら夜光雲」「緑ならオーロラ」と色だけで決めるのは適切ではありません。撮影設定によって写真の色や明るさも変わります。
夜光雲についてよくある疑問
ロケットの打ち上げでもできる?
ロケットが上空に供給する水蒸気が、夜光雲の形成に関わる場合があります。NASAの2022年の研究紹介では、衛星の観測とロケットの打ち上げ時刻を比べ、中緯度の夜光雲の出現との関連を調べています。
ただし、夜光雲がすべてロケット由来という意味ではありません。また、打ち上げ後の空に見える光や雲を、形だけで一律に夜光雲と呼べるわけでもありません。
夜光雲の写真を見つけたら、何を確認する?
撮影場所、日付、時刻、空の方向、元画像の説明を確認しましょう。研究機関や天文台による観測・同定があるかも手掛かりになります。「きれいに光る雲」という印象と、雲の種類を確かめる作業は分けて考えることが大切です。
同じように珍しい雲でも、形に特徴がある乳房雲や、太陽光で色づいて見える彩雲など、仕組みはさまざまです。
まとめ|夜の雲を照らすのも太陽だった
夜光雲は、高度およそ80〜90kmにできる氷の粒の雲です。自ら発光するのではなく、地上が暗くなっても高い上空には届いている太陽光で明るく見えます。
主に夏の高緯度地域で見られ、日本にも北海道での観測例があります。薄明の空に浮かぶ淡い輝きは、地球の丸さと、高層大気の冷たさ、小さな氷の粒が重なって生まれる不思議な景色なのです。


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