草原と森の向こうに、巨大な塔が一つだけそびえる。アメリカの「デビルズタワー」は、自然が作ったとは思えない姿で知られる岩山です。
平らに見える頂上と縦に並ぶ筋から、「巨大な木の切り株なのでは?」と紹介されることもあります。この記事では、デビルズタワーの正体とでき方、切り株説を考えるポイントを米国国立公園局(NPS)の資料で解説します。
デビルズタワーは、マグマに由来する火成岩の岩山です。縦の筋は、岩が冷えて縮むときにできる「柱状節理」。切り株に似た外観は、巨大樹だった証拠ではありません。ただし、地下でどのような形のマグマが冷えたのかなど、形成過程の細部には複数の説があります。
デビルズタワーとは?草原に立つ巨大な岩山
デビルズタワー(デビルスタワー)は、米国ワイオミング州北東部にある岩山です。1906年、アメリカで最初のナショナル・モニュメントに指定されました。
NPSの地質資料によると、頂上の広さは東西約55m、南北約91m。周辺のベルフーシュ川からは約386mの高さがあります。
一方、NPSのFAQでは、岩山の基部から頂上までは867フィート、約264mとされています。「高さ約260m」と「約386m」という数字を見かけても、すぐに矛盾とは限りません。どこを基準に測ったかが違うのです。
| 見るポイント | 資料に示される特徴 |
|---|---|
| 場所 | 米国ワイオミング州北東部 |
| 基部から頂上まで | 約264m |
| 周辺の川からの高さ | 約386m |
| 頂上の大きさ | 東西約55m、南北約91m |
| 岩石 | フォノライト斑岩(phonolite porphyry) |
デビルズタワーはどうやってできた?
地下のマグマと、周囲の岩石の侵食が鍵
NPSの形成過程の解説では、地下のマグマから始まったことと、その後の侵食で姿を現したことが基本として示されています。
現在の岩山が、今の形のまま地面を突き破って現れた、と考える必要はありません。周りを覆っていた岩石が削られ、比較的侵食に強い部分が目立つようになったのです。
ただし、もとのマグマの形や冷却の詳しい過程には、複数のモデルがあります。地下の小さな貫入岩体とする説、地層の間に入り込んだ岩体の名残とする説、火山活動との関係を考える説などです。
侵食は岩山を見えるようにしましたが、形成時の手掛かりも失わせました。「火成岩である」という判断と、「細かな形成史がすべて確定している」という話は分けて考えましょう。
縦の筋の正体は「柱状節理」
表面に並ぶ長い筋は、岩石が柱のように区切られた割れ目です。溶けた岩石が冷えて収縮すると、内部に力がかかり、割れ目が育ちます。これが柱状節理です。
デビルズタワーの柱は、すべてがきれいな六角形というわけではありません。NPSは五角形の柱もあると説明しています。自然の構造には、写真の第一印象よりも多くの不規則さが含まれています。
同じ仕組みで岩の柱が並ぶ景観には、ジャイアンツ・コーズウェイもあります。ただし、似た柱があるからといって、岩石の種類や形成場所まで同じとは限りません。
巨大な木の切り株説は本当?外観と岩石を分けて見る
切り株を連想する理由は分かります。平らに見える上面、側面に続く筋、裾が広がる輪郭は、遠くから見ると木の形にも似ています。
しかし、地質学では外観の印象だけで正体を決めません。デビルズタワーの岩石は、フォノライト斑岩という火成岩に分類されています。NPSの地質資料には、細かな石基の中に長石などの結晶が含まれる岩石として記載されています。
柱の筋も、木の繊維と見なさなくても、冷却収縮による割れ目として説明できます。巨大樹の切り株だと主張するなら、木に似て見えるというだけでなく、木の組織など、その解釈を支持する証拠が必要になります。
マグマが冷えた過程に未解決の点があることは、巨大な木だったことの根拠にはなりません。岩石から分かる性質と、形成史の詳しいモデルを分けて読むと、不思議な景観をより深く楽しめます。
頂上は本当に真っ平ら?中は空洞?
遠くからは切り口のように見えますが、NPSのFAQでは、頂上はわずかにドーム状で、岩が多く、草やサボテンなども生えていると説明されています。人工的に水平に切った面を想像すると、実際の様子とは違ってしまいます。
また、同FAQは、内部が空洞なのかという疑問に「いいえ」と回答しています。外周だけが残った巨大な筒や、木のうろのような構造を前提にする必要もありません。
写真を見るときは、撮影角度や距離によって細かな起伏が見えにくくなることにも注意しましょう。輪郭が直線に見えることと、表面が完全な平面であることは別です。
「悪魔の塔」だけではない、先住民の聖地としての顔
この場所は地質学の対象であると同時に、多くの先住民族にとって大切な場所です。NPSの文化史の解説では、ラコタやシャイアン、カイオワなど、複数の民族とのつながりが紹介されています。
Bear Lodge(クマのすみか)など、クマに結び付いた呼び名があることも特徴です。カイオワの口承には、クマに追われた少女たちが、せり上がる岩によって空へ押し上げられ、星になるという物語があります。
物語は民族ごとに異なり、一つにまとめられるものではありません。また、こうした文化的な伝承と、インターネット上の巨大樹説を同じものとして扱わないことも大切です。
不思議な形をどう説明するかだけでなく、人々がその場所とどのような関係を築いてきたかを見ると、岩山の別の奥行きが見えてきます。
まとめ|切り株に似た岩山に残る、本当の謎
デビルズタワーは、マグマに由来する火成岩の岩山です。縦の柱状節理や平らに見える頂上は印象的ですが、それだけで巨大樹の切り株とは判断できません。
一方で、形成過程の細部には研究の余地が残されています。外観の驚きから一歩進んで、岩石・割れ目・周囲の地形を読み解くことが、この奇景の面白さにつながります。


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