フィヨルドとは?でき方とリアス海岸との違いをわかりやすく解説

急な山の崖と滝に囲まれた青いフィヨルドの水彩イラスト

高い崖の間を、青い海が川のように細長く伸びていく。ノルウェーの写真などで見るフィヨルドは、独特の形をした海の入り江です。

どうして海が山の奥まで入り込んでいるのでしょうか。鍵を握るのは、かつて谷を埋めて流れていた巨大な氷河です。フィヨルドのでき方と、よく似たリアス海岸との違いを、地形が生まれる順番から見ていきましょう。

フィヨルドとは?氷河が削った谷に海が入った地形

フィヨルドとは、氷河の侵食を受けた谷が海面より低いところまで続き、海水で満たされた入り江です。典型的なものには、細長い湾、急な斜面、深い水底といった特徴があります。

米国地質調査所(USGS)は、海とつながり、海面下まで続く氷河に侵食・改変されたU字形の谷として説明しています。単に「細長い湾」という見た目だけでなく、氷河がつくった谷が海に沈んでいることが大切です。出典:USGS「Ecology of Glacier Bay National Park」

でき方をひとことで
氷河が谷を深く広く削る → 氷河が後退する → 海とつながる低い谷に海水が入り込む。この流れで生まれるのがフィヨルドです。

フィヨルドのでき方を3段階で解説

1.氷河が谷を流れ、底と側面を削る

氷河は動かない氷の塊ではなく、長い時間をかけて流れています。山の谷を満たす氷河が動くと、谷底だけでなく側面も侵食され、谷が広く深くなっていきます。

川が削った谷は、横から輪切りにした断面がV字形になるのが典型です。一方、谷全体を占める氷河によって削られると、底が広く、両側が急なU字形の谷になります。これを「U字谷」と呼びます。

2.気候が変わり、氷河が後退する

氷河が後退すると、それまで氷に覆われていた谷が姿を現します。山の間を削った跡は、氷がなくなっても地形として残ります。目の前に氷河が見えない場所でも、過去に氷河が流れていた可能性があるのです。

3.海面より低い谷に海水が入り込む

削られた谷が海とつながり、その底が海面より低ければ、海水で満たされます。こうして、山の間に海が入り込んだフィヨルドができます。U字谷すべてがフィヨルドになるわけではなく、海とのつながりが必要です。

米国国立公園局(NPS)は、フィヨルドの谷底が海面下にあるため海水に覆われると説明しています。陸上に残るU字谷と比べると、「氷河がつくった形」と「海に満たされた状態」の両方が見えてきます。出典:NPS「U-Shaped Valleys, Fjords, and Hanging Valleys」

フィヨルドとリアス海岸の違い

リアス海岸も、陸の谷に海が入り込んだ入り組んだ海岸です。フィヨルドとの大きな違いは、海が入る前の谷を、主に何が削ったかにあります。

比べる点 フィヨルド リアス海岸
もとになる谷 氷河に削られた谷 河川に削られた谷
典型的な谷の横断面 底の広いU字形 V字形
共通する点 谷が沈水し、海水が入り込んでいる
見分ける手がかり 氷河地形や急な谷壁など 河川の谷を反映した枝分かれなど

国土地理院は、リアス式海岸を、開析谷を持つ地形が部分的に沈水して生じた、樹枝状の入り江を持つ海岸と説明しています。開析谷とは、侵食によって刻まれた谷のことです。出典:国土地理院「海の作用による地形」

ただし、どちらも曲がったり枝分かれしたりすることがあります。「真っすぐならフィヨルド、ギザギザならリアス海岸」と写真の輪郭だけで決めるのは避けましょう。谷をつくった作用や周辺の地形を合わせて考えることが大切です。

なぜ細長い湾なのに、とても深いの?

フィヨルドは、海面のすぐ下まで山が迫っているだけの浅い入り江とは限りません。氷河と、その下を流れる融け水によって谷が深く削られ、海面下に大きな凹地が残ることがあります。

NASAによると、フィヨルドでは、深いくぼみの間に岩盤や氷河が運んだ堆積物による浅い敷居状の地形があるのが典型です。入口のほうが浅く、内陸側が深い場合もあります。海底まで一様な溝になっているとは限らないのです。出典:NASA「Hardangerfjord, Norway」

海面から見える崖は、地形の上側の一部にすぎません。水の下まで谷が続いていると想像すると、景色の大きさをさらに感じられます。

フィヨルド沿いに滝が多い理由

大きな氷河に、小さな支流の氷河が合流することがあります。大きな氷河の谷がより深く削られると、小さい氷河の谷底は、主な谷より高い位置に取り残されます。このような地形が「懸谷」です。

氷河が後退したあと、高い谷から低い谷へ川の水が流れ落ちれば、滝になります。すべての滝が同じ理由でできるわけではありませんが、氷河地形に見られる滝を理解する手がかりになります。

ノルウェーの代表例から地形を見る

代表的な例が、世界遺産「西ノルウェーフィヨルド群」を構成するガイランゲルフィヨルドとネーロイフィヨルドです。UNESCOは、急な岩壁、滝、森林、氷河などが組み合わさる景観と、氷河作用を示す地形を評価しています。出典:UNESCO「West Norwegian Fjords」

フィヨルドはノルウェーだけのものではありません。アラスカのグレイシャーベイにも見られます。場所の名前を覚えるだけでなく、「昔どのように氷河が流れたか」を考えて眺めると、地図や写真が立体的に見えてきます。

自然が地形をつくる働きは、氷河以外にもあります。風が岩を削るヤルダンのでき方や、水が石灰岩を溶かすカルスト地形の仕組みと比べると、削るものや岩の性質によって景色が変わる面白さがわかります。

まとめ

フィヨルドは、氷河が削った谷に海水が入り込んだ地形です。リアス海岸と見た目が似ていても、もとになる谷をつくった作用が異なります。

急な崖、深い海、谷壁を流れる滝。その一つひとつに、氷河が大地を削った歴史が残されています。壮大な景色を見かけたら、水面の下まで続く谷の形にも思いを巡らせてみてください。

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