宇宙には、地球の磁場とは桁違いの強さを持つ「マグネター」という星があります。名前は聞いたことがあっても、普通の中性子星やパルサーと何が違うのか、想像しにくい天体かもしれません。
この記事では、マグネターの磁力は地球の何倍なのかを数値で比べ、遠く離れた星の磁場をどう調べるのかまで解説します。
マグネターは、特に強い磁場を持つ中性子星です。代表的な表面磁場は100億〜1000億テスラ。地球の磁場を約50マイクロテスラとして比べると、約200兆〜2000兆倍になります。磁場の強さと、重力の強さは別の量です。
マグネターとは?強い磁場を持つ中性子星
マグネターは、中性子星の仲間です。中性子星は、大質量の星が進化したあとに残る、非常に高密度な天体。その中でも、とりわけ磁場が強いものがマグネターと呼ばれます。
「宇宙最強の磁石星」と紹介されることもありますが、鉄の棒磁石が巨大になった星、という意味ではありません。星を取り巻く強烈な磁場と、それに関連する激しい活動が特徴です。
中性子星そのものの成り立ちや密度は、中性子星とは?角砂糖1個で数億トンになる理由でも解説しています。
マグネターの磁力は地球の何倍?
磁場の強さには「テスラ(T)」という単位を使います。理化学研究所の解説に示された値で比べると、次のようになります。
| 比較する対象 | 磁場の強さの目安 | 地球を1とした比較 |
|---|---|---|
| 地球 | 約50マイクロテスラ(0.00005 T) | 1 |
| 太陽の黒点 | 約0.1 T | 約2000倍 |
| マグネターの表面 | 約100億〜1000億 T | 約200兆〜2000兆倍 |
倍率は、表の値を地球の0.00005 Tで割って計算しました。地球の磁場も場所によって変わり、マグネターも個々の天体で異なるため、あくまで代表値どうしの比較です。
また、この巨大な値は星の表面付近の磁場です。遠く離れた場所まで同じ強さが続くわけではありません。「何兆倍」という数字だけから、地球への影響を判断することもできません。
中性子星・パルサー・マグネターの違い
三つの言葉は、同じ基準で分けた分類ではありません。「中性子星」は天体の種類、「パルサー」は周期的なパルスが観測されることに注目した呼び方、「マグネター」は強い磁場に注目した呼び方です。
| 呼び名 | 注目している特徴 |
|---|---|
| 中性子星 | 非常に高密度な星の残骸という性質 |
| パルサー | 自転に伴い、放射が周期的なパルスとして届くこと |
| マグネター | 特に強い磁場と、磁場に関連する活動 |
そのため、マグネターからパルスが見つかっても矛盾ではありません。2020年に発見されたSwift J1818.0−1607では、X線に加え電波のパルスも観測されました。理研の発表では、自転周期などから表面磁場が約270億Tと推定されています。
遠い星の磁場をどうやって調べるの?
研究者が星の近くまで磁力計を運んでいるわけではありません。届いたX線や電波、自転周期の変化などを調べ、理論モデルと照らし合わせて磁場や星の状態を推定します。
X線の「偏光」から表面の状態に迫る
光には、波としての振動方向があります。その方向に偏りがある状態を「偏光」と呼びます。X線の明るさだけでなく偏光まで調べると、星の表面や磁場について別の手掛かりが得られます。
2022年の理研の研究発表では、X線偏光観測衛星IXPEでマグネター「4U 0142+61」を観測。得られた偏光の特徴は、大気がなく固体の表面が露出したモデルで説明できると報告されました。
これは特定の天体についての観測と解釈です。「すべてのマグネターには大気がない」と決まったわけではなく、強い磁場のもとで物質がどう振る舞うのかを探る例として捉えると分かりやすいでしょう。
高速電波バーストとのつながりも研究中
マグネターは、短時間に強い電波を放つ「高速電波バースト(FRB)」の研究でも注目されています。NASAの2024年の解説では、天の川銀河内のマグネターSGR 1935+2154で2022年に起きた電波バーストと、その前後の自転変化が紹介されています。
こうした観測は、星の内部や表面の変化と電波放射を結び付ける手掛かりです。ただし、宇宙で見つかるすべてのFRBの仕組みが解明された、という意味ではありません。
マグネターについてよくある疑問
磁力が強いなら、何でも吸い込む?
磁場と重力を分けて考えましょう。重力は質量を持つ物体に働き、磁場は電流や磁性を持つ物質などと関係します。磁場の倍率を、そのまま「物を吸い寄せる力の倍率」に読み替えることはできません。
ブラックホールの一種?
いいえ。マグネターは中性子星です。強い磁場を持つことと、ブラックホールであることは別の条件です。「強い」「極端な天体」という共通の印象だけで同一視しないことが大切です。
なぜ磁場がこれほど強くなるの?
星の誕生時の状態や内部の運動、磁場の進化などが関わる研究課題です。一つの短い説明だけですべての天体の形成と活動を説明できる段階ではありません。観測で確認された強い磁場と、その起源を説明する仮説は分けて読む必要があります。
まとめ|数字の大きさと観測の工夫が面白い星
マグネターは、特に強い磁場を持つ中性子星です。代表的な表面磁場は地球の約200兆〜2000兆倍に相当しますが、それは重力や遠方への影響の倍率ではありません。
本当の面白さは、そんな遠い天体を、X線の偏光や電波、自転の変化から調べられること。極端な磁場の世界は、光の情報を丁寧に読み解くことで少しずつ姿を現しているのです。


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