セーリングストーンはなぜ動く?デスバレーの石と氷の仕組みを解説

乾いた湖底の石の後ろに長い移動跡が続くセーリングストーンのイメージ

誰もいない乾いた湖底に、一つの石と長い引きずり跡が残っている。デスバレーの「セーリングストーン」は、石がひとりでに歩いたかのように見える、不思議な現象です。

しかし、動く仕組みは単なる想像の話ではありません。研究者は、実際に石が動く様子を観測しました。この記事では、セーリングストーンが動く理由、必要な条件、2014年に発表された研究を解説します。

先に答え
観測された石の移動には、水・薄い氷・風が関わっていました。浅い水面にできた氷が日中に割れ、風などで動く氷の板が石を押します。石は泥の上をゆっくり移動し、水がなくなったあとにも跡が残ります。

セーリングストーンとは?デスバレーに残る「動く石」の跡

セーリングストーンは、米国デスバレー国立公園のレーストラック・プラヤで知られる、石が地表を移動して跡を残す現象です。「プラヤ」は、乾いた湖底を指す言葉です。

米国国立公園局(NPS)の解説では、平らな湖底には多数の岩があり、何百メートルにも及ぶ跡が残る場合があると紹介されています。石は何年も動かずにいることもあります。

写真で目立つのは、岩の後ろに続く細い溝です。一直線に伸びるもの、途中で向きが変わるもの、複数の石で似た軌跡を描くものがあり、「何が押したのだろう」と考えたくなる景色になっています。

セーリングストーンはなぜ動く?氷が石を押す仕組み

NPSが2014年に公表した研究紹介では、動く石に必要だった条件を、次のような流れで説明しています。

  1. 浅い水がたまる:湖底に水が広がる。ただし、石全体が沈むほど深い状態とは限らない。
  2. 寒い夜に水面が凍る:水の表面に、薄い板状の氷ができる。
  3. 日中に氷が割れる:日差しで解け始めた氷が、大きな板に分かれる。
  4. 動く氷が石を押す:風などによって氷の板が移動し、湖底の石を押し動かす。
  5. 泥に移動跡が残る:石が泥の上を進んだあと、水や氷がなくなっても溝が見える。

ポイントは、風が石だけを直接吹き飛ばしたという話ではないことです。薄くても面積のある氷の板が力を受け、石の移動に関わっていました。

また、石が氷の上に乗ってスケートをする、という説明でもありません。観測では、水面に浮かぶ氷の板が、湖底にある石を押す仕組みが確かめられました。

2014年の研究では何が観測された?

研究成果は、2014年8月27日、学術誌PLOS ONEに発表されました。Norrisらの原著論文では、GPSを取り付けた石、写真、気象観測、タイムラプスカメラを組み合わせた調査が報告されています。

移動の直接観測は2013年12月から2014年1月の調査期間に行われました。「2014年に解明」という見出しを見るときは、論文の発表年と、観測した日付を区別すると整理しやすくなります。

観測された項目 論文に記載された目安
氷の厚さ 約3〜6mm
風速 約4〜5m/秒
石の移動速度 約2〜5m/分
複数回の移動を合わせた距離 計測した石の一部で最大224m

これらは、その観測で得られた値です。「風速が4m/秒になれば必ず動く」「一度で224m進んだ」という意味ではありません。水深や氷の状態なども同時に関係します。

なぜ長い間、動く瞬間が分からなかったの?

いつも動いているわけではない

移動跡は長く残っていても、石そのものは長期間止まっていることがあります。写真を撮りに行って数時間待てば動き出す、という現象ではありません。

乾いた地面の写真と、石が動くときの環境も違います。跡を見る人の多くは水がない状態を目にするため、水と氷が関わる場面を想像しにくかったのでしょう。

跡の推測だけでなく、移動中の記録が必要だった

同じ溝でも、完成した跡を見るだけでは、どのような力が、どの順番で働いたのかまでは分かりません。今回の研究では、位置・時刻・天候・映像を合わせることで、移動の説明を実際の出来事と結び付けられました。

「不思議な跡を見つけること」と「動いている間の原因を確かめること」の違いが、この研究の面白さです。

よくある疑問|重い石も全部同じ仕組み?

砂漠なのに氷ができるの?

デスバレーは暑さで有名ですが、暑い地域という印象だけで、一年中、夜も高温だと考えるのは適切ではありません。今回の観測では、冬の夜にできた氷が重要な役割を果たしました。最高気温のイメージと、特定の季節・時刻の条件は分けて考えましょう。

磁力や超常現象で動くのでは?

少なくとも今回観測された移動は、氷と風、水の働きで説明されています。見た目が不思議だからといって、観測されていない力を付け加える必要はありません。

ただし、一つの調査で、世界中の「動く石」と呼ばれる現象をすべて説明したことにもなりません。まずは、どこの石を、どの条件で調べた研究かを確認することが大切です。

最大級の岩も動く瞬間を観測できた?

NPSのレーストラック解説では、研究者が、特に大きな岩の移動はまだ見ていないと述べています。代表的な仕組みを直接確かめたことと、あらゆる大きさの岩の移動を個別に確認したことは違います。

「すべて未解明」とするのも、「もう何も調べることがない」とするのも極端です。観測で分かった範囲を押さえると、研究の成果を正確に楽しめます。

観察では石と地面の跡をそのままに

現地で大切なのは、石を動かしたり持ち去ったりしないことです。NPSは、乾いた湖底の表面が壊れやすいこと、車で乗り入れないこと、ぬれた泥の上に足跡を残さないことを案内しています。

石だけでなく、その位置と移動跡も景観の一部です。訪問を考える際は、NPSの現地案内で道路や訪問条件を確認してください。

まとめ|石を動かしたのは、薄い氷と風だった

セーリングストーンでは、浅い水面にできた薄い氷が割れ、風などで動く氷の板が石を押す様子が観測されました。長い移動跡だけを眺めていた謎が、移動中の記録によって具体的な仕組みと結び付きました。

不思議な景色には、岩そのものの形が印象的なデビルズタワーや、岩の柱が並ぶジャイアンツ・コーズウェイもあります。見た目の驚きから、自然が働いた過程をたどるのも面白い読み方です。

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